こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ノン子36歳 (家事手伝い)

otello2009-01-09

ノン子36歳 (家事手伝い)

ポイント ★★★
DATE 09/1/7
THEATER HTCB
監督 熊切和嘉
ナンバー 4
出演 坂井真紀/星野源/鶴見辰吾/津田寛治
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


タレント活動をあきらめ、結婚にも失敗し、実家の家族ともうまくいかない。東京での生活に敗れ、疲れ果てたままいまだに立ち直れずにもがいている若くない女。そのきっかけを模索しているのに時間だけがダラダラと過ぎてゆく。周りからは甘ったれていると思われ、彼らの視線に耐えられずツッパった態度を取ってしまう。そんな出戻りプータローの複雑な心境を坂井真紀が肩の力を力を抜いて好演。そしてやっと巡ってきたはずの一筋の光明さえ脆くも崩れていく過程で、負けても負けても、人生はずっと続いていくことを教えてくれる。


親元でパラサイト生活するノン子の元に藤巻という青年がやってくる。藤巻は神社の境内での出店許可を得ようとするが、仕切り役に断られてそのままノン子の家に居候する。そんな時、ノン子の元夫が現れノン子にタレント復帰と復縁を迫る。


元夫に口説かれたノン子が彼に抱かれるシーンが秀逸。下着を剥ぎ取られたノン子の秘部を巧みにちゃぶ台などの小道具で隠し、骨盤の浮き出た腰を見せるというカメラの使い方だけで、ノン子がたまっていた性欲を解放させる様子を表現する。後半にも坂井真紀がラブシーンで全裸になるが、やせてあばらの浮いた肉体は決して魅力的とは言えず、それだけにこの場面の「見せない演出」が光っていた。


やがて、元夫の復帰話は嘘とばれ、夜店でヒヨコを売るという藤巻の計画も水泡に帰す。彼らのホラ話に一抹の期待を抱いていたノン子は破滅に向かう藤巻と手に手をとり逃亡を図る。汚れた姿で電車に乗る2人。しかし映画は愛の逃避行といった甘いラストではなく、リアルな現実を突きつける。一瞬でもドラマのヒロインを再び実感したいのならば、ノン子は藤巻と最後まで行動を共にするはずだが、彼女はあっさりと藤巻を見捨てるのだ。もう夢は見ない、堅実に生きようという決心。その後藤巻の分身を見つけて笑顔を取り戻すノン子に、田舎の平凡な暮らしも捨てたものではないという一縷の希望を持たせるラストはさわやかだった。


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