こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー

otello2009-01-13

ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー HELLBOY II: THE GOLDEN ARMY


ポイント ★★*
DATE 09/1/9
THEATER CRosa
監督 ギレルモ・デル・トロ
ナンバー 6
出演 ロン・パールマン/セルマ・ブレア/ダグ・ジョーンズ/ジェフリー・タンバー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


魔物であってもエルフであっても、見かけによらず心は人間と同じ。喜怒哀楽だけでなく、あるものは権力欲に取りつかれ、あるものは自己顕示欲が抑えきれない。もちろん愛する気持ちや義理人情も「人並み」に持っている。違うのは外見と特殊なパワーだけ。にもかかわらず理性よりも暴力的衝動が先に立ち、憎しみをたぎらせて敵対する者を殺さずにはいられない。映画は異形ゆえ隔離され超能力ゆえ警察では対処できない事件を担当する極秘捜査官の活躍を通じて、混迷する国際情勢をトレースする。


伝説の無敵軍団・ゴールデンアーミー復活を目論むヌアダ王子は、カギとなる3分割された王冠を手に入れるためにNYのオークション会場を襲う。現場に急行した超常現象捜査防衛局のヘルボーイたちは無数の小動物に襲われるが退治、ヌアダを追ってトロールの市場に潜入する。


エルフやトロールといった魔界の生き物と、その世界の造形のファンタジックさに目を見張る。地下の異界は中世ヨーロッパ伝説とアラビアの魔窟を混在させたようなイメージで、そこに近代的な武器を持つヘルボーイが殴り込みをかける様子は、自分たちの正義のためならばまったく価値観の異なる他人の領域であろうとも土足で踏みにじる米軍を象徴しているよう。人間の支配に反抗するためにゴールデンアーミーという「大量破壊兵器」を手に入れようとするヌアダはイスラム系テロリストにも見える。


ランボー」や「7月4日に生まれて」の主人公がベトナムから戻ると世間や政府から冷たくあしらわれた事例にもあるように、いまや米国のイラク・アフガン帰還兵は社会から白い眼で見られるような存在になっているのだろうか。街を救うために「森の神」という緑の巨木と命がけで戦ったヘルボーイが市民から非難されるシーンに、永住権ほしさに軍隊に志願した非米国民の悲哀を見るようだった。


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