こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

20世紀少年−第2章−最後の希望

otello2009-02-02

20世紀少年−第2章−最後の希望

ポイント ★★
DATE 09/1/31
THEATER WMKH
監督 堤幸彦
ナンバー 26
出演 豊川悦司/常盤貴子/平愛梨/香川照之
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


カルト教団に支配された近未来の日本、国民はますます従順になり信仰を深め、学校では歪んだ歴史観を植えつけて生徒を洗脳していく。そんな、社会が全体主義に毒されていく過程が非常に不気味だ。しかし、目の中に人さし指を立てたイラストを描いたマスクをかぶったままの教祖が恐ろしく漫画的で、せっかく実写映画にしているのにそこだけが異様な違和感を放っている。それは、リアリティのまったくない荒唐無稽な展開の連続にため息を漏らしている観客に対し「これは所詮マンガなんだよ」と言い訳しているよう。原作では象徴的なシーンということで許されるような描写も、映像にすると意味不明になる可能性もあると作り手は気づくべきだ。


血の大晦日から15年後、ケンヂの姪・カンナは高校生となっていた。「ともだち」史観に強く反発するカンナは再教育施設に入れられ、ケンヂの少年時代をリロードする。そのころ、刑務所を脱獄したオッチョは「ともだち」を暗殺するために新宿に潜伏する。


広がりすぎた人間関係と多岐にわたる登場人物が第1章よりも物語を複雑にする。しかも本筋と無縁のエピソードがやたらに多くて作品の流れとスピードを奪い、無駄に上映時間を長くしている。たとえばカンナの隣人の漫画家など何のために出てきたのか。まさか次作の伏線ではあるまい。また、カンナの同級生にお面の少年の顔を見せる効果はどれほどあるのか。原っぱのメンバーたちにとって大阪万博が共通体験であり、新万博のシンボルに太陽の塔が使われている事実からも「ともだち」は幼なじみの中でも特に万博に思い入れがあるのは明らかなのだが、結局正体は明らかにされない。


その後も映画はさらに混迷の度を深め、ついに死亡したはずの「ともだち」が神として復活するなどという猿芝居まで用意する。そして「しんよげんのしょ」どおりに人類は終末を迎え、生き残った世界は「ともだち」のコントロール下に入る。この広げすぎた大風呂敷、第3章できちんと収束するのだろうか、楽しみでもあり心配でもある。


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