こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シャッフル

otello2009-02-03

シャッフル PREMONITION


ポイント ★★
DATE 09/1/31
THEATER 109KW
監督 メナン・ヤポ
ナンバー 27
出演 サンドラ・ブロック/ジュリアン・マクマホン/ニア・ロング/ケイト・ネリガン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


朝目覚めたら昨日とは連続していない今日が始まる。過去のことなのに記憶になく、未来のことなのに結果がわかる。回りの人間がすべての事情を知った上に口裏を合わせ、自分だけが蚊帳の外に置かれているような疎外感に、世界が歪んで見えてくる。そんな不思議な感覚に苛まれるヒロインはその状況の謎解きに挑戦していく。しかし、映画はなぜ彼女だけが奇妙な体験をするのか説明するわけではなく、運命をコントロールしようとする彼女も無力だ。


郊外の家に夫・ジムと2人の娘と住むリンダは、ある日ジムが交通事故で死亡したという知らせを受ける。翌朝起きるとジムがキッチンでテレビを見ていてピンピンしている。安心したリンダがさらに翌朝ベッドから出ると、ジムの葬儀が始まっていた。


リンダの時間だけが、ジムの死の前後1週間をランダムに行き来する。悲しみに満ちた事故後と対照的に、満ち足りた日常の事故の前だが、ジムの浮気に気付きその平穏もうわべのものだったと悟るリンダ。その他にも鳥の死骸や娘の顔の傷、損傷の激しいジムの遺体、不気味な精神科医などを登場させて、物語はリンダを心理的に追いつめてテンションを高めようとするが、単にリンダの精神が混乱しているだけにしか見えない。


そして、ついにジムが事故を起こした当日の朝となる。だが、むしろリンダが原因でジムが事故に巻き込まれたともいえるこの結末はなんなのだろう。運転中のジムに電話をしてUターンしろと不要な指示を出したおかげでジムはケータイを床に落とし、トレーラーの接近に気付かず下敷きになってしまうのだ。これではリンダに「私のせいでジムは死んだ」と思わせるだけで、彼女の時間を巻き戻したメリットが何もないではないか。ところが、その後のリンダはジムを死なせたことに何の後悔も抱かず、家族が愛し合った思い出に浸り幸せそうにしているシーンに至っては意味不明だ。凝った作りの割にはアイデア倒れで、「ドライブ中の携帯電話使用は死亡事故につながるから危険」という以外に作り手側の主張が見えてこなかった。


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