こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

キャラメル

otello2009-02-04

キャラメル CARAMEL


ポイント ★★★
DATE 09/2/2
THEATER ES
監督 ナディーン・ラバキー
ナンバー 28
出演 ナディーン・ラバキー/ヤスミーン・アル=マスリー/ジョアンナ・ムカルゼル/ジゼル・アウワード
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


結婚、不倫、同性愛、抗加齢、そして老い・・・。いくつになっても現役の「女」でありたいと願うさまざまな年代の女性たち。日々のできごとに心をときめかせたり、ガッカリしたり、怒ったり、喜んだりしながら、大きな夢を持っているわけではないけれど、小さな幸せは掴み取ろうとする。そんな彼女たちの日常を散文的な筆致で描きつつ、カメラは鋭く人間の内奥に迫る。それは戦乱に明け暮れたベイルートという都市では、平凡で人間的な悩みを持てることが彼女たちにとっていかに幸福かを物語っている。


ビューティーサロンを経営するラヤールは妻子持ちの男と不倫中。結婚を控えたニスリンは男性体験を気に病んでいる。リマの興味は髪の長い謎の美女。常連客のジャマールは若作りをしてオーディションに臨む。年老いた仕立て直し屋のローズは姉の徘徊に手を焼いている。


もう若くはないけれど、一応経営者としては順調なラヤールは、思い通りにならない恋にイライラしている。いつも突然呼び出され、短い逢瀬を楽しんだ後相手は家庭に帰っていく。ある日ラヤールはサロンに男の妻を呼び出し、彼女の人物評価をする。結婚記念日に備えてきれいになりたいとノーテンキに家族自慢をしている妻を冷ややかでかつ嫉妬の入り混じった視線で見つめるラヤールの気持ちがリアルだ。


他にもいつまでも若く見られたいジャマールは上がったはずの生理を偽装し、ニスリンは処女幕再生手術を受ける。紳士に誘われたローズは髪を染め直し、シワの深い顔に化粧をほどこす。女であり続けようと努力し、女としての価値を高めるためにできることはなんでもするという、女の執念。ビューティーサロンとはそうした女の欲望がストレートに発散される場所なのだ。とにかく生き抜くことが最重要課題だった時代は過去となり、美しく自分らしい人生を送ることが目的にできるほど復興したレバノンという国の、明るい未来を見せられるようだった。


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