こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

鎧 サムライゾンビ

otello2009-02-07

鎧 サムライゾンビ

ポイント ★★
DATE 09/1/15
THEATER GAGA
監督 坂口拓
ナンバー 11
出演 植田浩望/夏目ナナ/やべきょうすけ/中島愛里
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


裏切られ、惨殺された怨念は時を越え、現代に生きる者の運命をも支配する。仲のよい家族だけでなく、強盗や人殺しを平気でする悪党、そして警官まで巻き込んで、呪われた土地の血塗られた伝説を引き継いでいく。ゾンビとなった鎧武者がみせる憤怒の表情はその怒りがいかに深いものであるかを物語る。しかし、映画はホラーというより血しぶき飛び散るスプラッターを基本にしたむしろコメディといったほうがいいかもしれない。いかにも低予算ながら、体を張ったスタントとチンピラたちのぶっ飛んだ演技、鎧武者のリアルな造形を味わうべきなのだろう。


両親と娘・息子の4人家族がドライブ旅行中に白い服の男をはねてしまう。立ち上がった男は別の男女に射殺され、その男女は一家の車を乗っ取って、地図にない山奥の村に迷い込むがパンク、助けを求めに出た父親の首を下げた鎧武者が現れる。


乱杭歯の鎧武者の顔は腐食し、蛆虫が表面にうごめいている。動きは一見ノロノロとしているものの、戦闘モードにいったん入ると一刀のもとに人間の首をぶった切る剣術の腕前だけでなく、重火器を持つ者と戦うときは華麗な回し蹴りまで見せる。ゾンビであるがゆえに、当然車で轢かれてもショットガンでぶっ飛ばされても蘇って襲いかかってくる。さらに棍棒使いや矢を射てくる鎧武者まで登場して楽しませてくれる。ただ、襲われた人間がゾンビ化しないのではゾンビと呼べないはず。これでは「13日の金曜日」と同じではないか。


「死んじゃうジャン」という口癖で登場人物に絡んでくる白い服の男を演じたいしだ一成が光っていた。2人組に銃撃されても死なず、2階から突き落とされても復活するこの男もゾンビなのかと思ったが、鎧武者に首を刎ねられてしまう。せっかく強烈な個性を発揮しているのだから、彼にもう少し活躍の場を与えて欲しかった。結局、姉や母、強盗と警官も殺されてしまうが、その因縁はまるで「八つ墓村」。この安っぽい来歴もこの作品にはぴったりハマっていた。


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