こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マダガスカル2

otello2009-02-09

マダガスカル2 MADAGASCAR 2

ポイント ★★
DATE 09/1/26
THEATER PJ
監督 エリック・ダーネル/トム・マクグラス
ナンバー 22
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


大自然に生きる動物と人間はやはり共存できないものなのか。大都市の動物園では人間に芸を見せる人気者だったライオンが、ふとした弾みで仲間の動物たちと故郷のアフリカに戻ったときに、依存していた人間との絆をきっぱり切り、野性の暮らしを守り群れのリーダーシップに目覚めていく。その過程で人間が今度は自然のバランスを壊す敵となるのだ。しかし、映画はそんな教訓めいたこととは距離を置き、個性的なキャラクターの動物たちが繰り広げるアクションの連続でひたすら突っ走る。


動物園を脱走したライオンのアレックスはサバンナの真ん中に不時着、幼いころに生き別れた両親と再会する。ところが、野生動物たちのボスである父の後を継ごうと成人の儀式に臨んだアレックスはライバルに惨敗、両親と共に群れを追放される。


並行して、サファリツアーで遭難した観光客たちがジャングルにコミュニティを作り自活を始めた上にダムを築いたせいで、動物たちの水場が枯れてしまう。このあたり、21世紀は石油より水を支配したものが勝ち残るという新しい価値観を盛り込むだけでなく、人間が自然を破壊し動物の命を危機にさらしている構図も分りやすい。また、頭の働くペンギンがサルの群れを「現地の安い労働力」としてこき使う場面は発展途上国に進出するグローバル企業の投影にも見える。一方で、ジャングルでサバイバルしていくために環境に適応しようとする人間の知恵と勇気を描く節操のなさはいったいどこから来るのだろうか。


ライオンを素手の格闘で倒してしまう老婆は何のメタファーなのか。絶望しかけたツアー客に生きる希望を与えるリーダーとなる姿は預言者を髣髴させ、ボスの座を簒奪したライオンに鉄槌を下す姿は神のよう。かといって人間と自然の宥和を図っているわけでもなく、時々で圧倒的な能力を使い分ける。彼女に象徴される方向性のなさがこの物語のテーマを曖昧にし、結局何も明確には語らない。その混沌こそが、かえって作品世界の今日性を強調していた。


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