こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

少年メリケンサック

otello2009-02-16

少年メリケンサック


ポイント ★★★
DATE 09/2/14
THEATER THYK
監督 宮藤官九郎
ナンバー 39
出演 宮崎あおい/佐藤浩市/田口トモロヲ/木村祐一
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


既成の価値観を壊しても、壊し続けることはできない。パンクロックという破壊的な旋律と歌詞で世の中を挑発した若者も例外なく齢を重ね、いまや冴えないオッサンに堕している。そんなトホホ感を振りまく元ロッカーを佐藤浩市が熱演。「チャーハン」を頑なに「焼き飯」と呼ぶように、自分の世界観にしがみつき若い娘に悪態をつくことでしか自己表現する術を持たない男の哀愁を見事に演じていた。若いころは変革の先導者とあがめられても、年をとればただの偏屈オヤジになるのだ。


レコード会社契約社員のかんなは、ネットで「少年メリケンサック」というバンドの映像を見つけ、スカウトに向かう。その映像は25年前のもので、バンドはすでに解散、リーダーのアキオはオリジナルのメンバーを集めるのを条件に再結成を承諾する。


眉根を寄せた真剣な顔で仕事に取り組むかと思えば、甘ったるい声で恋人に甘え、オッサンたちのご機嫌を懸命に取ってツアーに向かうかんな。彼女の様々な表情を宮崎あおいが小劇場の芝居のようなはじけた演技で好演。さらにテンポの良い会話と絶妙の間は、役者としての彼女の魅力を一段と引き出している。大げさな感情表現が笑いだけでなくペーソスも誘い、いつしかかんなの気持ちに共感してしまう。


ただ、このバンドのテクニック的な未熟さは何なのだろう。一応カネを取ってライブを開くのならば、数曲は完全に歌えるくらいの練習をするはず。少なくともボーカルのジミーをきちんとさせるべきだ。ずっと車いす生活でろれつも回らない、そんな男をなぜほうっておくのか。しかも、その身障者ぶりは芝居で実はケガの後遺症は全くない。おそらく身障者年金を詐取するためだが、そのあたり説得力のある理由がほしい。あと、「嘘を上回る奇跡をおこす」とアキオは言うが、そのために努力する姿を見せてほしかった。まあ、頑張っているところを他人に見られずにステージで暴れまわるのがパンクの魂なのかもしれないが。。。


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