こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

7つの贈り物

otello2009-02-22

7つの贈り物


ポイント ★★
DATE 09/2/21
THEATER 109KH
監督 ガブリエレ・ムッチーノ
ナンバー 43
出演 ウィル・スミス/ロザリオ・ドーソン/ウディ・ハレルソン/バリー・ペッパー/マイケル・イーリー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


自殺予告電話をかけた男の人生がフラッシュバックされる。幸せだった妻との記憶、やり手営業マンで相当な収入、そして悲劇的な交通事故。そういった大過去と、公務員として数人のプライバシーを調べ上げた末に接近する近過去の断片が混在し、一切の説明はない。彼が何者で、その意図をなかなか見せないことでミステリーのテイストを纏うが、思わせぶりな語り口でほぼ映画の最後まで答を明かさないという、あまりにももったいぶった構成のおかげで、中盤以降はかなり中だるみした印象を受ける。もう少しヒントを小出しにして見る者の興味を殺がない工夫をすべきだ。


国税局員のベンは心臓に欠陥を待つエミリーの関心を引こうとする。他にも、DVに苦しむヒスパニック女性や盲目のテレフォンオペレーターなどの身辺を調査しては彼らの前に現れ、どんな人間なのかを確認していく。


ベンの独りよがりの真相を知るのは親友のダンだけなのだが、ダンを語り部にするといったようなアイデアが必要だろう。もしくはベンの遺志を受け継いだ人々がベンの思い出を話すとか。あくまでベンの主観で物語は展開するが、あえて時系列を破壊する編集はただ疑問を深めるだけだ。いたずらにベンの真意に謎めいた装飾をほどこすのは、自己の過失で失われた7つの命を贖うために己れの命で7人の人生を救済しようとするベンの決意を汚しているだけだ。


結局、ベンはドナーが生きているうちは移植できない部位を提供するために、氷漬けのバスタブで猛毒クラゲに刺されるという方法で命を絶つ。自らの臓器で他人を救うだけでは飽き足らず、自らを罰するような死に方。ベンが責任感と使命感の強い人であるのはよくわかる。しかし、助けた人々に遺書を残すなど、やはり自分の行為を感謝されたい気持ちも残っている。本当に贖罪をしたいのなら、無名に徹するはずだ。そもそも相手に「誰も見ていない時もいい人間」であることを求めるなど、非常に「上から目線」の持ち主だ。そのあたり、善人であろうとして結果的に周囲を混乱させたベンと同様、「いい話」を作ろうとして観客を錯綜させるこの作品の姿勢と似てはいるが。。。


↓メルマガ登録はこちらから↓