こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ドロップ

otello2009-02-26

ドロップ

ポイント ★★*
DATE 08/12/11
THEATER 角川
監督 品川祐
ナンバー 299
出演 成宮寛貴/水嶋ヒロ/本仮屋ユイカ/上地雄輔
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


「ケンカするのに理由が必要か」と、ただ殴り蹴りバットを振り回す。迫力満点の暴力は痛みが伴うようなリアリティが貫き、20代の俳優が演じる老けた中学生という不自然さを凌駕する。さらに、力と力、どちらが強いかを確かめ合うかのように繰り返し拳を交わすうちに、不思議な友情まで芽生えてくる。ケンカは部活のようなものという先輩の言葉通り、登場人物の日常と化している。それは、有り余るエネルギーを発散させ、生傷でしか生きていることを実感できない彼らの自己存在証明。そこには小賢しさがない分、さわやかだ。


不良になるために公立中に転校したヒロシは早速タツヤというヤンキーに絞められるが、根性を買われる。ヒロシは持前の社交性で他校の不良とも仲良くなり仲間を増やしていくが、赤城・加藤という不良コンビにボコボコにされる。


集団戦では縦横に暴れまわり、タイマンでは正々堂々と闘う。不正をしてケンカに勝っても信頼や尊敬は勝ち取れない。破壊行為はしても、カツアゲなどはしない。不良には不良なりのルールがあり、その世界で悪さをしているだけだからある種スポーツのように思えてくる。ヒロシたちは非常に友達思いだったり、赤城が大人に対して妙に礼儀正しかったりするなど、恰好はツッパリでも実はみないいやつ。そもそも不良になりたいと言っていたヒロシですらきちんとした家庭で育ち、彼の部屋もきちんと片付いている。不良たちは少し早く大人になりたいだけなのだ。卒業式で「あおげば尊し」を泣きながら歌うあたり、普通の生徒以上に中学校に対して愛着を持っていたことがよくわかる。


高校を1日で退学になったヒロシはまじめに働く決心をするが、暴走族に拉致された赤城と加藤を救うために仕事をすっぽかす。その間、兄のように慕っていた青年が建築現場で事故にあい、ヒロシは今の自分がいかに中途半端な生き方しかしていなかったかと気づく。不良など所詮は世間に甘えているだけの存在でしかなく、大人になるというのは自分の行動にきちんと責任を持つこと。そこをヒロシに自覚させるラストは心地よかった。


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