こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

オーストラリア

otello2009-03-01

オーストラリア AUSTRALIA


ポイント ★★
DATE 09/2/28
THEATER THYK
監督 バズ・ラーマン
ナンバー 50
出演 ニコール・キッドマン/ヒュー・ジャックマン/デヴィッド・ウェンハム/ブライアン・ブラウン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


赤茶けた大地を馬で駆け抜け、牛の大群を移動させる人々。まるで50〜60年代のハリウッド製西部劇かと見まがうほどこの地の風土は米国中西部に似ている。そこで繰り広げられる物語も、上流階級の夫人が荒野での生活をものともとせずたくましく生き抜くというステレオタイプ。わずかに原住民に対する差別と太平洋戦争での日本軍の攻撃を描き、この作品の舞台がオーストラリアであることを思い出させてくれる。タイトルに母国の名を冠しながら、バズ・ラーマンはどうしてローカル色を強調しなかったのか。


英国貴族の妻・サラは夫を探してオーストラリアに来るが、すでに夫は死亡、相続した土地を守るために牧場に残された1500頭の牛をダーウィン駐留の軍隊に売る決意をする。ドローヴァーというカウボーイを雇い、アボリジニの混血少年・ナラや使用人らとともに旅に出る。


なぜサラが受けるカルチャーショックを省いたのだろう。たとえば北の空を横切る太陽や粗野な言葉、反時計回りの渦など。彼女は初めて見る未開の大陸に驚きや怯えなど感じたはずだ。それがカンガルーを見たときにはしゃぐだけとはにわかに信じがたい。ナラが勝手に部屋に入ってきてもすんなり受け入れるし、過酷な牛追いにも弱音一つ吐かない。世界にオーストラリアの素顔を知ってもらおうと企画されたのだから、サラという外部の人間の目を通してその魅力をもっと見せてほしかった。


一応、ナラが不当に隔離されたり、ナラの祖父である呪術師の老人が透明人間のように自然に溶け込んで共存しているシーンなどを用意しているが、彼らの文化や風習にまで踏み込んで理解しようとはせず、そのあたりも非常に中途半端。特に水不足のピンチをどう切り抜けたかを省略するのは手抜きではないか。大スターの共演、恋と友情、冒険と活劇、そういった娯楽大作の要素をてんこ盛りにした壮大なスケールであるのは確かだが、どこかガソリンを馬鹿食いする時代遅れのアメ車に乗っているような大味さは最後まで消えなかった。。。


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