こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アンダーワールド:ビギンズ

otello2009-03-16

アンダーワールド:ビギンズ UNDERWORLD: RISE OF THE LYCANS

ポイント ★★*
DATE 09/3/14
THEATER THYK
監督 パトリック・タトポロス
ナンバー 61
出演 マイケル・シーン/ ビル・ナイ/ローナ・ミトラ/スティーヴン・マッキントッシュ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ヴァンパイアと狼男。なにゆえ彼らは憎しみ合い殺しあうのか。ともに不死の能力を得た人間を始祖としながらも、その能力ゆえにヴァンパイアは高度な社会を築きあげ、狼男は野生の獣のよう生きている。しかし、狼男にも変身できる人間=ライカンをヴァンパイアが作り出した時、二つの種族の間には主人と奴隷という関係が生まれ、やがてライカンに残っている人間の知性が自由への欲望を加速させる。映画は種族間の抗争というより階級闘争の様相を呈し、何びとも抑圧から解放されまともな生活を送る権利があることを物語る。


ヴァンパイアの長老・ビクターはライカンのルシアンに人間を咬ませて、新たにライカンになった者たちを奴隷として酷使していた。一方、ルシアンはビクターの娘・ソーニャと密かに愛し合っていて、ある日ソーニャが狼男の襲撃にあっていたところを助けた結果、ビクターの怒りを買う。


ライカンのルシアンは本来同じ種族である狼男を非情にも惨殺する。それでも狼たちはルシアンをリーダーのように思っているのか、狼男に姿を変えたルシアンの命令は聞く。また、彼は奴隷の供給源でもあるためにビクターからは特別待遇を受けているが、真の自由を求める心を止められず、ソーニャを愛する気持ちも抑えきれない。そのあたりルシアンの立場が非常に複雑。仲間を救おうとすればソーニャを殺さざるをえず、ソーニャを守ろうとすれば仲間もヴァンパイアも敵に回す。そんな、思い切った行動をなかなかとれないルシアンの苦悩をもう少し描いてほしかった。


その後ソーニャがビクターによって処刑され、重石が取れたルシアンはライカンや狼男に蜂起を促し、一気にヴァンパイアの城を攻め落とす。ところが、クライマックスとなる大激闘シーンは闇の中で時折フラッシュが瞬く短いカットの連続で、何が起きているのかよくわからない。剣や3連射のボウガンなどの武器の造形が素晴らしいだけに、きちんとカメラを据えてどんなアクションが繰り広げられているのか見せてほしかった。


↓メルマガ登録はこちらから↓