こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ある公爵夫人の生涯

otello2009-03-20

ある公爵夫人の生涯 THE DUCHESS


ポイント ★★*
DATE 09/2/10
THEATER TTS
監督 ソウル・ディブ
ナンバー 35
出演 キーラ・ナイトレイ/レイフ・ファインズ/シャーロット・ランプリング/ドミニク・クーパー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


女は後継ぎを産むための道具、そう信じているような領主に嫁いだ若い娘は、自由と平等を口にする進歩的な考えの持ち主。夫は思想が違う妻と距離を取り、妻は革新的な政治家に惹かれていく。強大な王権が揺らぎ始めた民主主義萌芽期の18世紀末イングランド、自らの愛と信念に従ったヒロインの姿を通じて、結婚生活とは何かを問う。愛よりも打算、思いやりよりあきらめ、胸襟を開くよりは我慢、どんなに冷めた仲でもプライドと世間体がふたりを引き離せない現実。夫の愛人をはさんで長い食卓に着く位置関係が、この夫婦の奇妙で気まずいながらも、形だけは壊すまいとする決意の表れのようで印象深かった。


ジョージアナは公爵と結婚するが男子に恵まれず、公爵の気持ちは離れていく。そんなとき、ジョージアナの親友・エリザベスの寝室に公爵がもぐりこんだと知り、ジョージアナはショックを受ける。ある日、ジョージアナは初恋の相手グレイと再会し、急速に間を縮めていく。


新婚当時、「公爵はベッドで全然話をしてくれない」とジョージアナが母に愚痴をこぼすが、おそらく公爵は彼女とのセックスが不満だったのだろう。メイドに手を出すなど女出入りが激しい公爵にとって、淡白なジョージアナはマグロを抱いているような不毛感を覚えたに違いない。だからこそエリザベスの性技に溺れ、セックスの悦びを共有できるエリザベスを愛人としたのだ。映像では描かれないが、男女の仲を長続きさせるのは愛でもカネでもなく、セックスの相性であるということがこの作品の隠されたテーマだ。


ただ、このライティングの悪さはいったいなんなのだ。電気がなく、ろうそくの炎が頼りだった時代の雰囲気を出そうとしているのは理解できるが、夜間の室内シーンではほとんど俳優の表情が読み取れないほど画面は暗い。昼間の場面でも光量が不足気味で、せっかく揃えた家具調度や凝ったデザインの衣装を十分に楽しむことができなかった。


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