こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マックス・ペイン

otello2009-03-23

マックス・ペイン Max Payne


ポイント ★★
DATE 09/3/16
THEATER FOX
監督 ジョン・ムーア
ナンバー 63
出演 マーク・ウォールバーグ/オルガ・キュリレンコ/ミラ・クニス/ボー・ブリッジス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


寒色を基調にしたメタリックな映像が、愛する妻子を惨殺された一匹狼の刑事の荒涼とした心象風景を表現する。兵士を好戦的にさせるドラッグ、それを飲んだときに起こる幻覚をパワーに変換できる者は巨大な翼を広げて空を舞う戦士のごとき全能感を得るが、心の弱いものは逆に翼に押しつぶされるような惨めさを味わう。復讐を誓った主人公は、瀕死の状態からそのドラッグを口にして強烈な高揚感を手に入れ絶望的な状況を切り抜ける。クールで硬質な現実と燃え上がる炎のような興奮が生み出すヴィジョン、その対比が鮮やかだ。


はぐれ刑事のマックスはジャンキーの切断死体を調べるうちに、新型のドラッグをめぐるロシアマフィアの暗躍に気付き、さらにドラッグを開発した製薬会社に勤めていた妻が殺された原因に迫る。その過程でクラブで知り合った女やかつての同僚といった身近な知人に危害が及んでいく。


戦場での恐怖を取り除く禁断のドラッグ、その危険性にマックスの妻が気付いたことから命を奪われる。 マックスは単身製薬会社に殴り込みをかけるが、製薬会社のセキュリティ部門が対テロ部隊のような装備を持っている。自動小銃にプラスティック爆弾、そんな重武装の一団に拳銃一丁でマックスは応戦するシーンがすさまじい迫力。オフィスが修羅場と化し、圧倒的な武力の前で日常はいかに非力であるかを象徴しているようだ。


しかし、一番のクライマックスとなるはずだった、ルピーノというドラッグ増強者の元軍曹との対決はあっけなく決着がつく上、意外な人物の裏切りや警察内部の腐敗なども盛り込むために二転三転し、物語は混乱するばかり。ストーリーを無理矢理膨らますより、増強兵士との肉弾戦を前面に押し出したアクションにしたほうがよかったのではないか。オルガ・キリレンコ扮するロシア美女もあっさり死んでしまうし、ロシアマフィアのモナの存在もイマイチ説得力がない。いたずらに人間関係を複雑にしすぎてかえってスピード感を奪っていた。


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