こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

鑑識・米沢守の事件簿

otello2009-03-29

鑑識・米沢守の事件簿


ポイント ★★
DATE 09/3/28
THEATER THYK
監督 長谷部安春
ナンバー 73
出演 六角精児/萩原聖人/市川染五郎/片桐はいり/伊武雅刀
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


おかっぱ頭に黒縁めがね、小太りの体型はいかにもオタクという雰囲気を醸し出し、おどおどとした物腰はもの言わぬ死体や物証を集めて分析するのが特技であることを雄弁に物語る。そんな主人公が生身の人間を相手に捜査を進めようとするが、その過程は難問山積。物事を冷静に判断できない相棒と行動を共にするうちに、謎が謎を呼ぶ予想外の展開と意外な真犯人が浮かび上がる。しかし、しつこいくらいに饒舌な音楽が過剰なまでに主人公の感情を増幅させ、取ってつけたようなどんでん返しが興を殺ぐ。


鑑識員の米沢は、マラソン参加者の映像に逃げた妻・知子の姿を見つける。翌日彼女が服毒死体で発見されるが、実はそっくりの他人で名も同じ知子。そこに現れた知子の夫・相原という刑事とともに、他殺の線で独自に捜査を始める。やがて、警察の外郭団体で理事長から知子がセクハラを受けていたという情報を得る。


知子は自室で青酸カリを飲んだ上に遺書らしいメモまで残し、特に部屋を荒らされた跡もない。それだけでこんなにも簡単に自殺と断定されるものなのか。そのあたりの警察の杜撰さが恐ろしい。また天下り先確保のためにキャリア官僚が捜査の妨害をするなどというエピソードも、公務員制度改革と税金の無駄遣いの話題も盛り込み今日性を持たせている。映画は、そういった既得権益確保のために官僚と天下り元官僚が黒い連携を作り、そこに米沢と相川が挑んでいくという構図をとるのかと思いきや、警察機構という現実に押しつぶされてしまう。なぜもっと公益法人の実態を追及して社会性を持たせなかったのだろうか。


鑑識員たる米沢の腕の見せ所はモニター映像や指紋、血液型を調べる程度で新鮮味が全くないのが致命的。おまけに、事件解決の糸口をつかんだ米沢と相原が外郭団体の理事長室に乗り込むシーンがあるが、いくら現役の警察官でも令状もアポもなく突然踏み込むなど不可能なはず。結局事件の真相も取ってつけたようなオチだった。脚本家はもう少し伏線の張り方を研究したほうが良い。


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