こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パニッシャー:ウォー・ゾーン

otello2009-04-02

パニッシャー:ウォー・ゾーン PUNISHER:WAR ZONE


ポイント ★★★
DATE 09/3/30
THEATER SONY
監督 レクシー・アレクサンダー
ナンバー 74
出演 レイ・スティーヴンソン/ドミニク・ウェスト/ジュリー・ベンツ/コリン・サーモン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


悪党はどんな小物でも許さず、悪事を働いた時点で改心する猶予を与えず容赦なく頭に銃弾をぶち込む。善悪の狭間で揺れ動く最近流行のアメコミ原作ものとは一線を画し、確固たる信念の元で裁きの鉄槌を下す主人公。彼の正義には一切の迷いがなく、単純な価値観が非常に心地よい。手にする武器はナイフから拳銃・自動小銃、時にロケット弾まで、それらを駆使し、脳漿をぶちまけ喉をかき切り骨をへし折る。その血なまぐささが作品にバイタリティを与え、憤怒と憎悪を糧に闇の社会で生きる男の感情を見事に表現している。


パニッシャーとして犯罪者を処刑するフランクは、ある日マフィアの晩餐を襲う。出席者を皆殺しにしたうえ、ビリーという若手のボスを切り刻む。復讐を誓ったビリーは弟のジミーを脱獄させ、フランクの命を狙う。


フランクは強靭な肉体と運動能力を持つが、あくまで生身の人間だ。空を飛んだり珍妙な道具や新兵器を使ったりはしないが、それでも元特殊部隊の教官でどこか非現実的な強さを持つ。彼はまるで、バットマンの舞台で全盛期のS・セガールが大暴れするかのごとく、暗くねじれた世界を直線的に突き進む。目を背けたくなるような殺戮シーンの連続も彩度を落とした映像のおかげでかえってクールに見え、飛び散る血にも美学が感じられる。


フランクはビリーのアジトを襲ったときにFBIの潜入捜査官を誤殺してしまい、警察からも追われる羽目になる。そしてビリー一味が遺族を人質に取ってフランクを追い詰める。その過程で、一度は逮捕されたビリーがテロリストの情報をFBIに売って自由の身になる。そんな、法や取引に縛られて極悪人を野放しにせざるを得ない警察やFBIの無力感と、超法規的に活躍するフランクに対する警官の複雑な思いがリアルに描かれる。「パニッシャーは正義だ」という言葉に象徴されるように、混迷する時代だからこそ、自らの良心に従って行動し、誰もが正しいと認めることができるヒーローが待ち望まれているのだ。


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