こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バンコック・デンジャラス

otello2009-04-05

バンコック・デンジャラス Bangkok Dangerous


ポイント ★★*
DATE 09/4/3
THEATER KT
監督 オキサイド・パン/ダニー・パン
ナンバー 78
出演 ニコラス・ケイジ/チャーリー・ヤン/シャクリット・ヤムナーム
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


一瞬も気が休まる時はなく、胸のうちを打ち明ける相手もいない。高額の報酬と引き換えに得るものは究極の孤独。それは一匹狼の殺し屋として暗殺の成功率を100パーセントに保つために自らに課した掟だ。しかし、そんな男が弟子を取り、堅気の女に心を奪われたとき、精密機械に誤差が生じるかのごとく運命が暗転。喧騒と排気ガス、悪徳と暴力に満ちた街・バンコック、その瘴気が主人公の計算を狂わせていく。守るべきものができるということは、エネルギーの源となる一方で弱点にもなるのだ。映画は愛と情ゆえに身を滅ぼしてゆく男を通じて、銃弾と血にまみれた死の美学を描く。


プラハで仕事を終えたジョーはバンコックに飛び、新たに4人の暗殺を請け負う。連絡係兼通訳としてコンという男を雇い、最初の1人を襲撃するが帰りに負傷、立ち寄った薬局で美しい店員・フォンと出会う。ジョーはコンに暗殺術を教える傍ら、フォンとの距離を縮めていく。


フォンは口が利けないゆえに身振りでコミュニケーションをとろうとするため、タイ語を理解しないジョーとも意思の疎通が図れる。何より緊張の連続だったジョーにとって、彼女とのひと時はつかの間の安らぎ。チンピラに襲われたジョーが彼女に気付かれないまま二人を殺し、飛び散る鮮血でフォンがジョーの正体を知る場面は言葉に頼らず多くを語る。また、ボートで逃げるターゲットを追うシーンでは、川底から見上げるアングルにカメラを置いて、穴が開いた船底から水中に流れ出す血で止めを刺したことを示唆し、そのセンスは抜群だ。


だが、政治家暗殺に失敗したジョーは、スラットという依頼人に裏切られ上にコンと彼の恋人を人質に取られる。2人を単身救出に向かうが、倉庫での銃撃戦はぬるい展開で、ジョーの暗殺者としての身体能力の見せ場はない。しかも手負いとなった後、なぜかスラットと心中してしまう。ジョーひとりならば警察の包囲を振り切って逃げ切れたはずだ。このあたり、もう少しアクションとしてのクライマックスをきちんと作って欲しかった。


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