こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

テラートレイン

otello2009-04-11

テラートレイン TRAIN


ポイント ★★
DATE 09/4/8
THEATER TCC
監督 ギデオン・ラフ
ナンバー 82
出演 ゾーラ・バーチ/ギデオン・エメリー/ケイヴァン・リース/デレク・マグヤー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


手足にすっとメスを入れ、皮膚を剥ぎ、臓器を取りだす。まるで食肉用に家畜を解体するかのような手際よさで人体を処理していく男。捕らえられたものは肉を切り裂かれ、目玉をえぐられ、悶絶のうちに息絶えていく。突然降りかかる災難、その苦痛と不条理、そして絶望の果ての諦めが滴る血とともにリアルに再現される。東欧を舞台に、言葉が通じず相手の考えが読めない不気味さと、古い歴史を持ちながら戦乱に明け暮れた土地に残る謎めいた先入観が、さらなる恐怖を増幅させる。


リトアニア遠征に来ていた米国の学生チーム6人の予定が狂い、行き先不明の列車に乗り込む。怪しげな車掌やボーイの言動にもどかしさを覚えながらもコンパートメントに入るが、その夜コーチが行方不明になる。そんな中、女子選手のアレックスは列車に潜む不穏な空気を察知する。


彼らを罠にかけた正体不明の殺人者たちは、すぐに殺さず、じっくりと獲物に痛みを感じさせる。医療用の解剖器具だけでなく、鉈や斧まで用意して、生贄となったものが味わう感情を観客にも共有させる。そのおぞましさはスクリーンを正視できないほど。流れる血よりも、むしろ筋肉を切り内臓をさばくような触感が強調され、こらえきれないほどの嘔吐感が見る者の体内で発酵していく。まさにB急ホラーの王道を行くような描き方だ。


やがて、列車は山奥で停車、アレックスが乗客の後をつけると、そこは移植手術を待つ患者が滞在する医療施設。恋人と同じ目を持つ子供を見つけたアレックスは仲間の健康な臓器が売られていたことに気付く。そして1人生き残ったアレックスは列車に火を放ち、悪の組織を壊滅させる。最後に残った処刑人との対決では恋人に教わった首投げで相手を仕留め、逆に磔刑のお返し。ハメをはずした若者にお灸を据えながらも、ラストではきちんと救いの手を差し伸べ復讐させることで、この不快極まりない作品に安堵感を持たせている。


↓その他上映中の作品はこちらから↓