こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バーン・アフター・リーディング

otello2009-04-27

バーン・アフター・リーディング Burn After Reading

ポイント ★★
DATE 09/4/25
THEATER 109KH
監督 イーサン・コーエン/ジョエル・コーエン
ナンバー 98
出演 ブラッド・ピット/ジョージ・クルーニー/ジョン・マルコヴィッチ/ティルダ・スウィントン/フランシス・マクドーマンド
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


人間の欲望など所詮カネとセックス。普段は抑制していても、ちょっとしたきっかけで爆発するともう誰も止められない。たとえCIAという巨大な情報組織であっても、一般人の奇抜な発想と予想外の行動に手を焼き、対処を誤ってしまう。表面を嘘と秘密で糊塗した一見平和な日常に亀裂が走ったとき、だれもが理性を失って暴走する。そんな、人の愚かさをシニカルに俯瞰するコーエン兄弟の作風は健在。だが、コメディタッチにしてしまったせいで血なまぐさい暴力描写との親和性が薄れてしまい、強烈な個性の登場人物を生かし切れていない。


CIAをクビになったオジーは暴露本を執筆するが、データを記録したCDを妻・ケイティの雇った調査員が紛失する。そのCDを拾ったフィットネスインストラクターのチャドは同僚のリンダと共謀してオジーを脅すが失敗、2人はロシア大使館にCDを売り込む。


チャドとリンダが杜撰な計画にのめり込むうちに身動きが取れなくなる展開に、まったく真剣さが欠如しているのが致命的。チャドはアホ丸出しの上、リンダの動機も全身美容整形の手術費用をねん出。そのうえ企みをジム内でペラペラしゃべっているくせに盗聴を恐れていたりする。また、ケイティの不倫相手・ハリーを中心にした複雑な男女関係の愛憎も、実はハリーの妻が調査員を雇ってハリーの身辺を探っていたというオチ以外は期待外れだった。


結局、彼ら全員を見張っていたCIAの管理官ですら事の成行きに首をかしげるばかりで、たいした機密に触れていないオジーの暴露ネタは放置される。エンドロールでCIAを揶揄する歌が流れるが、要するにこの作品はCIAがいかに無駄なことに税金を投入しているかを描きたかったのだろう。CIAにはオジーのような壊れた男がいて、彼の周リにいるのも少しねじが緩んだ男女ばかり。彼らを調査して国家の安全保障という重要な仕事をした気になっている。CIAに対する不信感は理解できるが、ここまで緊張感に欠けると問題を訴える力も弱くなるのだ。


↓メルマガ登録はこちらから↓