こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

いけちゃんとぼく

otello2009-04-28

いけちゃんとぼく

ポイント ★★
DATE 09/4/23
THEATER 角川
監督 大岡俊彦
ナンバー 96
出演 深澤嵐/萩原聖人/ともさかりえ/モト冬樹
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


どんなにガキ大将に殴られても、決して涙は見せない。そのくせいつもやられっぱなしの自分の情けなさに腹を立て、昆虫を殺したり弱い子をいじめて憂さ晴らす。一方でシャンプーするときに目を瞑ると風呂場にお化けが出ると信じていたり、夜中のトイレが怖くてたまらない。そんな小学生の少年が感じる世界がリアルに再現され、子供は子供なりに深刻な悩みを持ち、必死に生きるために戦っている姿がとても健気だ。映画は、父の急死で早く大人になる運命を背負った主人公の成長を優しくみつめる。


海岸の町に住むヨシオは、通学の途中毎日のようにヤスとタケシに因縁をつけられている。仲間を集めて仕返ししようとするがあえなく失敗。ある日、父の愛人を見に隣町に行くが、その帰りに地元の不良に襲われる。


ヨシオのそばにいけちゃんという精霊がいつも付き添っていて、本音を吐き出せる相手になっている。他人には見えず、ただ、ヨシオをいつも見守っているだけの存在。物語はいけちゃんに励まされながら人生の難問に立ち向かっていくヨシオが、いつしか1人で生きてゆけるようになるまでを描くのだが、どうも各々のエピソードのスタイルが中途半端。悪ガキたちが突き抜けたバカをするわけでもなく、父を失ったヨシオの切実な思いを訴えているわけでもない。心は大人になろうとしているのに思考はまだまだ子供という、この年頃のチグハグさが表現できていなかった。


しかも、あれほど憎んでいたヤスとタケシが隣町の不良にリンチされていると、反射的に助けに行くなど不可解な行動をとる。さらに空き地をめぐって野球で勝負をするのだが、このあたりになるともはやハチャメチャ。それがコメディタッチならば楽しめるが、CGを使って本格的な剛速球を投げさせるのだ。結局、大学生になったヨシオはいけちゃんを忘れ、いけちゃんの正体が明かされるエピローグもあまり必要性も感じなかった。いけちゃんを「ヨシオの心が作り上げた逃げ場所」というありきたりなものにしたくないという意図は理解できるが、遠い未来の妻の思念という設定にはかなりの無理があった。


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