こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ビバリーヒルズ・チワワ

otello2009-05-07

ビバリーヒルズ・チワワ BEVERLY HILLS CHIHUAHUA

ポイント ★★★
DATE 09/5/2
THEATER 109GM
監督 ラジャ・ゴスネル
ナンバー 105
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


端正な顔立ちと華奢な体、遠くを見るようなつぶらな瞳はつい抱きしめたくなる。チワワの愛らしさを前面に押し出しながらも、演じる役割は飼い主に甘やかされ放題の性悪ペット。ドレスを着せられた上に靴まではかされて美容室で毎日エステ三昧、雑種犬だけでなく人間まで見下した態度をとる。そんな犬の気持ちを人間の言葉でしゃべらせた脚本が秀逸。犬の考えをリアルに伝える一方で、愛犬家の誤った接し方が犬たちにいかに悪影響を与えているかを痛烈に皮肉っている。まさに「犬は飼い主に似る」のだ。


セレブに大切に育てられているチワワのクロエはレイチェルという娘に預けられる。レイチェルのメキシコ旅行に連れて行かれるが、迷子になってしまい闘犬家に誘拐されてしまう。危うく殺されそうになるがジャーマンシェパードデルガドに救われ、行動を共にするようになる。


闘犬と同じ檻に入れられているのに、高級服に身を包みダイヤのネックレスをつけたまま。自分の置かれている状況を受け入れられず、プライドの高さから決して弱みを見せない。タカビーなのに、どこか守ってやらなければと思わせるクロエの姿がいじらしい。勘違いで場違いなセリフの数々がさらにクロエの世間ずれしていないお嬢様感を強調し、デルガドをあきれさせる半面、彼の父性本能をくすぐる。人間が演じれば厭味に見えてもチワワだと妙な説得力があった。


やがて飼い主のいない自分はただの野良犬でしかないと悟ったクロエは、何とか家に帰ろうとする。飼い主の言いなりになっていれば快適な暮らしを保障されてた過去に別れを告げるように、最後まではいていた靴を捨てるのだ。それは飼われるのではなく自力で生きていこうという決意の表れ。お嬢様育ちのヒロインが過酷な経験をする過程で思いやりや親切といった人情を知り、成長と自立を促すというありがちなパターンながら、そのドラマを訓練された犬およびCGに演じさせるというアイデアと、本音トークが満載されたセリフの数々がテンポの良いコメディとして昇華され、最後まで楽しめる作品だった。


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