こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

BABY BABY BABY!

otello2009-05-27

BABY BABY BABY!


ポイント ★*
DATE 09/5/25
THEATER 渋谷TOEI1
監督 両沢和幸
ナンバー 122
出演 観月ありさ/松下由樹/谷原章介/神田うの/伊藤かずえ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


女性の社会進出と子育て環境の未整備が原因で少子化が進んでいる、などという大上段に構えたアプローチで始まるこの作品、ヒロインは例に漏れずグラビア雑誌の副編集長というおしゃれで知的で高収入の設定。しかし、編集部内の描写からまったくリアリティに乏しく、後に続く展開もただ登場人物が妊娠をネタにはしゃいでいるだけ。もちろん、時折、彼女らが抱える悩みや赤ちゃんを宿した喜びなども描かれるが、そこには生命に対する尊厳は微塵もない。妊娠・出産を楽しいものととらえようする意図は理解できるが、これでは実際の妊婦も共感できないだろう。出産経験ゼロの女優に妊婦役はやはり無理がある。


ベトナム取材中、カメラマンの哲也と「酔った勢いで一発やっちゃった」陽子は妊娠する。哲也を日本に呼び戻すと、哲也が編集部で妊娠を公表したため内示を受けていた編集長昇進をフイに。一方、産科の病院では春江という妊婦と知り合い、仲間を増やしていく。


自社ビルを持つほどの大手出版社ならば産休制度も完備しているはず。それを利用しようともせず、陽子は勢いで退職してしまう。都心の超高級マンションからいきなり団地暮らし、多少蓄えはあったとしても飛躍しすぎだ。また、哲也は陽子の妊娠を慶事と受け止め、積極的に父親になろうとする。陽子と哲也の間には「一発やった」以上の感情的な盛り上がりはないはずなのに、この哲也の迷いのなさはどこからくるのか。できてしまった子供はしかたないが、その子の父親になるのは陽子まで受け入れることだと哲也は分っているのだろうか。


やがて陽子は産気づき、産院に運び込まれる。するとなぜか他にも4人の妊婦が破水し、一箇所で5人同時に出産という余りにもベタな場面が待ち受けている。そのドタバタぶりはまったく笑えず滑りまくっているが、ここまでくるとある種奇妙なカタルシスさえ覚えるから不思議だった。お気楽OL向けのTVドラマと同じような感覚で映画を作るべきではない。


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