こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

30デイズ・ナイト 

otello2009-06-03

30デイズ・ナイト 30 DAYS OF NIGHT

ポイント ★★*
DATE 09/5/29
THEATER BM
監督 デヴィッド・スレイド
ナンバー 126
出演 ジョシュ・ハートネット/メリッサ・ジョージ/ダニー・ヒューストン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


釣り上った目に肉食獣の尖った歯と猛禽の鉤爪を持ち夜空に向かって咆哮する姿は、従来のヴァンパイアのイメージを一新させる。そこにはノーブルな面影も知的なふるまいも一切なく、渇望を癒すために人間を襲撃し血をすするだけ。ニンニクや十字架といった古典的な弱点はすでになく、倒すには首を切り落とすか肉体を完全につぶすか、紫外線を当てるしか方法はない。冬季は太陽が昇らない極北の小さな街を舞台に繰り広げられるヴァンパイアの謝肉祭、絶望的な状況で生き残った人間は知恵と勇気で彼らに立ち向かう。


アラスカ北部の街では30日にも及ぶ長い夜・極夜に備えて冬ごもりの支度をしていた。保安官のエバンは携帯電話が大量に燃やされたり、犬ぞり用の犬が皆殺しにされるという事件を調査しているうちに、飛行機に乗り遅れた元妻のステラと再会する。そんなとき街は停電になり、ヴァンパイアの一団が乗り込んでくる。


突然民家の窓を突き破ったかと思うと、家の中にいる人々をぶちのめし壁に叩きつけ、喉笛に喰らいつく。圧倒的な身体能力は人間をはるかに凌駕し、ナイフや銃弾も歯が立たない。ヴァンパイアの犠牲になった市民が通りに死屍累々となり、氷雪の上に赤い血の花を咲かせるような情景を俯瞰で納めるショットは恐怖と殺戮の美学。さらに襲った人間を仲間にするのを拒み、純血を守ろうとする。ヴァンパイアは完全な人間の敵と定義すること
で、逆に人間がヴァンパイアを殺すときに良心の呵責という迷いを吹っ切り、作品のスピ
ード感を増幅させる。


エバン達生存者たちは屋根裏部屋に身を潜め、時に食料を求めて移動するが、基本的には極夜が明けるまでの持久戦。このあたりたっぷりと時間があったのだから、もっとヴァンパイアの生態を研究して対抗策を練ってほしかった。唯一、植物用の紫外線発光機で反撃するが、倒したのは女ヴァンパイア1体のみ。大がかりな罠を仕掛けてヴァンパイアどもを根こそぎ焼き殺してくれたならばすっきりしたのだが。。。


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