こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ

otello2009-06-04

チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ

ポイント ★★★
DATE 09/6/2
THEATER SCTKYU
監督 ニキル・アドヴァーニー
ナンバー 129
出演 アクシャイ・クマール/ディピカ・パドゥコン/ミトゥン・チャクラヴァルティー/ランヴィール・ショウリー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


活劇と人情とコメディと美女、そこに歌と踊りがミックスされた、「映画は娯楽だ」というストレートなメッセージが心地よい。ストーリーは大体予想がつくのだが、2時間30分以上の上映時間を中だるみさせることなく、次々と濃密な見せ場でつなぐ映像に身を浸しているだけで幸せな気分になってくる。インドの冴えない青年が万里の長城近くに住む中国人を救うという波乱万丈の展開は、思考停止にしなければ楽しめないが、積極的に頭の中を空っぽにするのをなんら恥じることはない。


デリーの下町で厨房の下働きをするシドゥは成功を夢見る青年だが、一歩を踏み出す勇気がなくうだつの上がらないまま。ある日、北条という男に搾取される中国人たちがシドゥを救国の英雄・劉勝の生まれ変わりとしてスカウト、シドゥは詳しいことが分らぬまま中国に向かう。


前半、くすぶっているシドゥが努力しないで運命を切り開こうとしたり、それを見た彼の親方が尻を蹴飛すなど、あまりにもベタ過ぎてあきれてしまう。しかし、そこを乗り越えて舞台を中国に移してからはカンフーを中心としたアクションになり、謎の美女とその双子の姉妹、いわくありげなホームレス、白面巨人なども加わって俄然スピード感が増す。特に、屋上に追い詰められたシドゥが傘を持った美女に救われて空中散歩するシーンは非常に詩的で美しい。往年の香港とハリウッドの作品を混合して煮詰めたような密度の高さは洗練さえ感じさせる手際のよさだ。


シドゥを演じたアクシャイ・クマールの身体的能力の高さがこの映画のすべてだ。ダンス上達マシンで怪しげな踊りを次々と披露したかと思うと、正統派のミュージカルもこなす。さらに、「酔拳」と「ロッキー4」のようなトレーニングを積んでマーシャルアーツを体得。クライマックスの北条との決闘ではマカロニウエスタンのような演出で盛り上げ、奥義を尽くした格闘術で決着をつける。エンタテインメントへのあくなき探究心とハイテンションはエンドロールまで衰えなかった。


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