こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ウルトラミラクルラブストーリー

otello2009-06-09

ウルトラミラクルラブストーリー

ポイント ★★
DATE 09/6/5
THEATER THYK
監督 横浜聡子
ナンバー 134
出演 松山ケンイチ/麻生久美子/渡辺美佐子/原田芳雄
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


半分くらい何を言っているのか理解不能の訛りのきつい津軽弁に始まり、キャベツ畑から首だけ出して埋められたり、逆に首のない人間と楽しく会話したり、さらには心臓が止まっても生き続ける。それは知的障害を持った主人公の妄想でもなく、何らかの隠れた寓意を含むメタファーでもない。周囲の人々は微妙に歪んだ現実を疑問をさしはさむことなく受け入れる。脳みその配線を間違えられた男が異常な方法で少しづつ正常を取り戻す過程で、常識や理屈を超越した観念が映画を支配する。答えを探すことを拒否し、考えることを放棄させるようなエピソードの連続は、物語の有機的な帰結よりも見る者の思考を置き去りにするのが目的であるかのようだ。


自宅で有機野菜を栽培する陽人は、東京からやってきて幼稚園の先生になった町子に一目ぼれする。ある日、陽人は農薬を浴びて意識が清明になり、町子に対する振る舞いが変わった結果、町子も陽人を受け入れる。陽人はもっと自分で農薬を浴びるようになる。


陽人は町子と結婚すると宣言するが、町子にその気は全くない。それでも決してあきらめずに両想いになるまでと、陽人は町子に付きまとう。やがて陽人は農薬の浴びすぎで死んでしまうが、なぜか生き返る。心臓は動かず食事もしないが、意識も体温も普通。町子はそんな陽人を受け入れる決意し、陽人と暮らし始める。シュールな設定なのに、陽人が死ぬ以前より彼らの生活が穏やかで満ち足りたものに見えるという、生と死、日常と非日常が見事に融和したシーンだった。


その後、陽人は森でハンターに撃たれ、今度は本当に死ぬ。陽人の脳を受け取った町子は、脳をを森の熊に食べさせるが、その晴れ晴れとした表情は何の暗喩なのだろうか。それらの映像は強烈な魅力を放ち好奇心を刺激するが、その本質を決して見せない、そんな不思議な作品だった。要するに、退屈しないけど意味不明だったということだけれど。。。


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