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映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

僕らはあの空の下で

otello2009-06-19

僕らはあの空の下で

ポイント ★★*
DATE 09/6/16
THEATER EB
監督 平林克理
ナンバー 142
出演 古川雄大/細貝圭/永岡卓也/佐藤永典
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


美少年、文科系、湿度の高い友情、夢とあきらめ。卒業を目前にした高校生たちの繊細な心の動きをしっとりとした映像にスケッチする。女子は1人も出てこない、そんな環境の下で男子生徒同士は恋愛にも似た感情の高まりをみせる。共に同じ目標を目指していたきらめきの日々は過ぎ、いつしか訪れる別れ。好きなのに離れ離れになる運命の2人の切ない胸中がリアルに再現される。見詰め合う瞳、抑えきれない気持ちと嫉妬など、ここで描かれるのはソフトなボーイズラブだ。


漫画雑誌のコンクールに何度も応募しては落選を続ける浩紀。彼の学校にボストンから修が転校してくる。修もまた漫画賞に応募していたことを知った浩紀は修に原作を書いてくれと頼み、自らは作画に専念、2人で作り上げた作品で応募する。


活動的で生徒会長を務める浩紀と、少し暗い陰をまとった修。浩紀は本格的にプロの漫画家を目指していて、修の物語を紡ぎだす才能に惚れている。修はどこか覚めていて、彼の謎めいた部分に浩紀は強烈に魅かれていくが、修は本心を見せない。やがて学校を休みがちになった修は浩紀にコンビ解消を告げるが、理由を明かさないために二人の間はこじれていく。そのあたり、浩紀の修への思いが強ければ強いほど、裏切られたと誤解していく浩紀の単純さが切ない。そして浩紀の気持ちを知りながらも、応えてやれないふがいなさから自分を責める修の姿が悲しい。いくつもの教室が並ぶ学校の廊下をとらえた遠近感を取り除いたショットが美しかった。


卒業式前日、ボストンに戻ることになった修は一日早く卒業証書を受け取りに学校に来る。親友の直が浩紀と修を仲直りさせようとするが、浩紀は素直になれない。ここでも浩紀はあくまでいじいじとし、修もなかなか行動に移さない。おそらく、ふたりともそれが友情ではなく恋愛であることに薄々気付いているのだろう。少年から大人になる一時期の感情の揺れを、同性愛的な視点で見つめるカメラは最後まで甘い体臭を放っているようだった。


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