こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

男と女の不都合な真実

otello2009-06-23

男と女の不都合な真実 The Ugly Truth


ポイント ★★*
DATE 09/6/19
THEATER SONY
監督 ロバート・ルケティック
ナンバー 145
出演 キャサリン・ハイグル/ジェラルド・バトラー/シェリル・ハインズ/ジョン・マイケル・ビギンズ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


どんなに気の利いたシチュエーションで飾っても、男の気持ちは「やりたい」のひとこと。それは女も同じで、いかにして本音を隠して己の価値を高めるかを日夜研究している。愛などという言葉は性欲を上品に言い換えただけであると喝破する傍ら、恋愛においては先に動いたほうが主導権を奪われる駆け引きの重要性も説く。真実は常に醜く、特に男女関係において正鵠を射ている主人公の信念がコミカルな展開の中で非常に説得力を持って描かれる。結局、相手の好みに合わせて演技しているより、素のままの自分をさらけ出し、その姿を愛してくれるパートナーが最高なのだ。


TVプロデューサーのアビーは、視聴率アップのために下ネタ満載トークを売り物にするマイクを出演させる。反響は大きくマイクはレギュラーに抜擢。一方、アビーは隣に引っ越してきた外科医のコリンに一目ぼれ、マイクに恋の駆け引きの指南を受ける。


見るからに男くさく放送禁止用語を平気で口にするマイクが最初の出演でセックスレスのキャスター夫婦を仲直りさせるシーンは、夫婦だからこそお互いに態度に出せずに我慢してきた鬱憤をすべて吐き出させ、夫には男らしさを、妻には女らしさを取り戻させる。このあたりセリフはかなり下品であるにも関わらず、登場人物の仕種が洗練されていて上質なコメディとして楽しめる。


映画や小説に出てくるような、アビーの理想の男性像であるはずのコリンは、いざ付き合ってみるといかにもマニュアル男な感じで、アビーは息が詰まりそう。マイクのほうも胸のうちを包み隠さず吐露しているようで、アビーに対してはどこか及び腰。物語の後半は、男女の微妙な思考法の違いの一般論からアビーとマイクの繊細な心理状態へとシフトし、お互い腹の探りあいを経てハッピーエンドに持っていくお決まりのパターンに落ちつく。出張先のホテルのエレベーターで熱いキスを交わした後の間の悪さはやきもきさせてふたりの感情がリアルに再現できているのに、引き抜きにあったマイクがアビーの番組に出演して気球上での口げんかを中継するのは結論を急ぐようで少し強引。もうひとひねり工夫がほしかった。。。


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