こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

未来の食卓

otello2009-06-26

未来の食卓 Nos enfants nous accuseront

ポイント ★★*
DATE 09/6/24
THEATER EB
監督 ジャン=ポール・ジョー
ナンバー 149
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


除草剤を使っている果樹園に隣接するオーガニックの畑。果樹園はきれいに表土が露出しているがオーガニック畑は作物が雑草の中に埋もれ、その境界は見事に線引きされたような雑草の壁。しかし、果樹園の土は乾いた粘土のように固く脆いが、オーガニック畑の土は草の根やミミズといった生命にあふれている。降った雨も前者は表層を削り取るが後者は地中にしみ込んで命を育む。農薬による汚染は土から始まり、農作物を通じて人間の口に入る。統計やグラフでは実感がわかないが、死んだ土と生きている土の対比は切実な恐怖を見るものに与える。


南フランスのバルジャック村で始まった学校給食のオーガニック化。近隣の農家と契約し、有機農法栽培・収穫した野菜や肉・牛乳などを材料に食事を子供たちに提供する。やがてその運動は全村的に広がり、オーガニックに切り替える農家やオーガニック専門店なども出現する。


いのちの食べかた」で描かれたような大規模な農園や工場で単一の規格作物を安価に大量生産するグローバル化の波に、フランス農業も飲み込まれた時期があったが、オーガニックはその対極を行くような地産地消多品種少量生産だ。人手がかかるために価格に反映されるが、「食の安全」のためには必須の負担。映画に登場する人々はその負担を「良心」であり「誠意」であるという。化学物質が含まれた食べ物を拒否するのは自分たちの健康だけでなく子の世代に対する責任でもあり、ひいては環境を守ることにつながると断言する。オーガニックにしてから生活に必要なものしか買わなくなったという主婦の言葉が的を射ていた。


赤ちゃんの体に有害物質が含まれていたり、少女がガンに冒されたり、それらはすべて母親の胎内にいたときに受けた健康被害が原因。今、汚染食糧の摂取を止めないと、その悪影響を受けるのは子供たちであるという事実に戦慄の思いだった。ただ、肥満や糖尿病の増加まで化学物質のせいにするのはいかがなものか。オーガニック食品でも過剰摂取すれば健康を害すると思うのだが。。。


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