こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ドゥームズデイ

otello2009-07-10

ドゥームズデイ DOOMSDAY

ポイント ★★*
DATE 09/7/8
THEATER KT
監督 ニール・マーシャル
ナンバー 162
出演 ローナ・ミトラ/ボブ・ホスキンス/マルコム・マクダウェル
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


至近距離の銃撃で被弾した警官の脳漿が飛び散ったり、鉄の扉に腕がはさまったり、装甲車が悪党を轢き殺したり、敵の手首や頭を一刀のもとに切り落としたり、生きたまま捕虜を丸焼きにしてローストされた肉を食らったり……。残虐なシーンの羅列ながら、肉が潰され骨が砕かれ皮膚が焦げる瞬間が非常にリアルで、大型の昆虫やトマトを踏みつぶした時のように内容物がはみ出しながらぺちゃんこになっていく。皮膚感覚ともいえる質感からはそのまま苦痛が伝わってくる。人間の肉体の脆さを強調することで、無力だからこそそこに宿る精神の在り方が重要になってくると主張しているようだ。


英国で死のウイルスの蔓延、スコットランドが隔離され全滅する。20数年後、ロンドンで再び死のウイルスが発生、ワクチンを研究していたケイン博士を探しすためにエデンが率いる特殊部隊がスコットランドの生存者のもとに送り込まれる。しかし、生存者は暴徒となって特殊部隊に襲い掛かってくる。


2035年を舞台にしているのに、自動車・ヘリコプター・武器から、ファッションや街のデザインまで21世紀初頭の現代とほとんど変わらない。生存者がたむろする街はパンク風のならず者に支配され、彼らと袂を分かった一団は城郭都市に住み中世風の装い。科学の進歩よりむしろ文明が停滞してしまった世界が、破滅に向かう人類の未来を予感させる。唯一、無線カメラ内蔵の義眼を使って自分の身を隠したまま敵の様子を探るエデンだけが洗練されたテクノロジーの恩恵を受けている。その彼女もたばこをやめられない。社会だけでなく人間の精神さえも明らかに退行している、そんな希望なき時代を再現するヴィジュアルが変化に富んでいて楽しませてくれる。


エデンの一行は仲間を失いながらもワクチンを探し続けるが、生存者は元々抗体を持っていたことが判明する。さらにケイン博士の一団とパンク軍団に追われるのだが、結末を急ぐように物語も疾走する。予想を裏切る展開にしようとする意図は理解できるが、後半はもう少し緻密にエピソードを練りこんでほしかった。


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