こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハリー・ポッターと謎のプリンス

otello2009-07-16

ハリー・ポッターと謎のプリンス
HARRY POTTER AND THE HALF BLOOD PRINCE


ポイント ★★*
DATE 09/7/15
THEATER 109KW
監督 デヴィッド・イェーツ
ナンバー 168
出演 ダニエル・ラドクリフ/ルパート・グリント/エマ・ワトソン/ジム・ブロードベント
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ハーマイオニーのような常に勤勉で完全主義者の優等生タイプは、向上心を満たしてくれるすぐれた男を選ぶのかと思いきや、明らかな劣等性のロンに惹かれている。一方のロンは、美人でスキのなさすぎる彼女よりも、ストレートに胸のふくらみを腕に押しつけてくるような女子に心地よさを感じている。好きという気持ちだけではどうにもならない、恋というハードルの前に苦悩するハーマイオニーの姿がセンチメンタルだ。親友が恋人に昇格する瞬間、それは普通の状態ならば恥ずかしくて告白などできなくても、無意識に口にしてしまうひとことが決め手になる。


ダンブルドアは、ヴォルデモートの秘密を知るスラグホーンをホグワーツに招聘する。スラグホーンの授業に出席したハリーは、詳細な書き込みと「半純血のプリンス」という署名のある教科書を手に入れ、優秀な成績を収める。


まるで世界の終末を予感させるかのごとき暗雲が校舎に垂れこめ、かつて盛大な饗宴の場であった大ホールも手入れが行き届いていない。ホグワーツそのものが廃校寸前のようで、心なしか生徒数も減っている気がする。生徒たちはハリーのグループ以外は闇の勢力の排除に興味はなさそうだし、日和見を決め込む先生もいる。ヴォルデモートとの最終決戦に備えるならば、ダンブルドア校長はもっと学校を挙げての対策を練るべきだろう。シリウス亡きあとハリーひとりに重責を担わせるには荷が重すぎる。


やがて、最終章「死の秘宝」につながるキーワードとなる、ヴォルデモート攻略の糸口である分霊箱、ダンブルドアの死、半純血のプリンスの正体が明らかになる。ただこの作品は、冒頭のミレニアム橋の破壊とロンが大活躍するクィディッチのシーン以外には視覚的な見せ場に乏しく、内容も陰々鬱々とした死臭漂う世界を濃密に反映させている。つまり、原作の持つイメージを忠実に映像化しているものの、映画的な興奮に乏しいのだ。はっきり言って、「謎のプリンス」の原作を読んでいれば、映画を観なくても次回作は楽しめるだろう。。。


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