こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

宇宙へ。

otello2009-07-19

宇宙へ。


ポイント ★★★
DATE 09/7/3
THEATER SONY
監督 リチャード・デイル
ナンバー 158
出演

宇宙を目指す夢はそのままNASAの目的となり、米国は威信をかけて遠大なプロジェクトを実行に移す。米ソ冷戦のさなかに始まった宇宙開発競争、マーキュリー計画からジェミニ計画、月探査を目標としたアポロ計画、そして80年代から始まったスペースシャトルNASAの膨大なアーカイブから厳選された映像は、そこに記録された宇宙飛行士たちの生々しい息遣いだけでなく、携わった人々、さらに一般市民の反応まで当時の息吹を身近に感じさせる。「未来は臆病者のものではなく勇者のもの」という精神に象徴される、進取の気性と冒険心、ときに命すら犠牲にしても抑えきれない好奇心を再現し、人間の理性の勝利を高らかに歌い上げる。


初めて宇宙空間に送り出され過酷な環境に耐えて無事帰還したチンパンジーのおかげで、人間も宇宙に出ることができると分かった研究者たちは、宇宙飛行士にハードな訓練を課す。船外活動も可能になり、ケネディ大統領は「60年代のうちに人間を月に送り込む」と宣言する。


数多くの失敗と試行錯誤、成功までの道のりに費やされた莫大な資金マンパワー、そのあくなき開拓精神こそが米国人の誇りなのだろう。そして常にヒーローを求め続ける国民性がこのミッションを後押ししている。やはり圧巻はアームストロングによる月面着陸。「小さな一歩でも人類にとっては大きな一歩」という有名な言葉とともに星条旗を地面に立てるシーンは何度見ても人類の無限大の可能性を感じさせてくれる。さらに後のアポロ乗組員は月面車でドライブまでする。人々はみな、21世紀には月に人が移住しても不思議ではないと考えていたと思わせる。


やがてスペースシャトルの時代となり、一般人でも適性があれば宇宙に行けるようになる。初期の宇宙船コックピットは身動きできないほど狭いのに、スペースシャトルは居住性が格段に進歩しているのが印象的。映画はあくまで宇宙開発の軍事利用面には目を瞑る。その資料は機密扱いで公開されていないからだろうが、レーガン政権下のスターウォーズ計画のような、実は生臭い理由もあったことを明らかにしてくれればもっと興味深い作品になったはずだ。


↓メルマガ登録はこちらから↓