こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

G.I.ジョー

otello2009-07-25

G.I.ジョー G.I. Joe: The Rise of Cobra

ポイント ★★★
DATE 09/7/23
THEATER ML
監督 スティーヴン・ソマーズ
ナンバー 175
出演 チャニング・テイタム/シエナ・ミラー/イ・ビョンホン/レイチェル・ニコルズ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


パワーを増幅させるボディスーツに身を包んだ男たちが装甲を施したハマーを追う。銃弾やロケット弾の攻撃と弾き飛ばされた自動車が降ってくる中、大通りから路地裏まで驚異的な走力と跳躍力で駆け抜ける姿はスピードとスリルが満点。さらに基底部が腐食したエッフェル塔セーヌ川に横倒しになるシーンでは、ランドマークが突然崩壊するテロの恐怖がリアルに再現される。冒頭の弾頭争奪戦から、パリの大追撃、北極の秘密基地での死闘など、壮大なスケールの実写とCGの合成による膨大な情報量は見る者を思考停止に追い込む。一方で登場人物の性格付けが明確でわかりやすく整理されているところに好感が持てた。


デュークとリップコードは金属を食べる性質を持ったナノマイト弾を輸送途中に「コブラ」という高度な武装集団に襲われるが、謎の戦闘部隊に救われる。NATO加盟国から精鋭を集めたその「G.I.ジョー」にデュークとリップコードの2人も入隊するが、部隊の秘密基地に「コブラ」のアナとストームシャドーが潜入、ナノマイト弾は奪われる。


デュークを発展途上の若者ではなく成熟した戦士として扱っているところがよい。戦隊ヒーローものの定石として、新加入のメンバーが挫折や親友の死を乗り越えて一人前に成長する姿が描かれるものだが、デュークは元から特殊部隊所属の筋金入り。新たな武器の使い方を短時間レクチャーされるだけでいきなり実戦配備され、主人公の役割を果たしていく。善悪のはざまで苦悩するという手あかのついたヒーロー像からも一線を画し、ゆるぎない正義が安心感を与えてくれる。


デュークとアナの愛の蹉跌だけでなくスネークアイズとストームシャドーの因縁も絡め、物語は最終決戦に突入する。そのあたりのセンチメンタルな表現も必要最低限にとどめ、アクションに徹する。ここまで来るともはや頭をからっぽにして刺激を身を委ねるしかなく、大迫力の躍動感で観客を圧倒しようとする映像はパルス砲の直撃を受けたような衝撃だった。


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