こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アドレナリン:ハイ・ボルテージ

otello2009-08-06

アドレナリン:ハイ・ボルテージ Crank: High Voltage


ポイント ★★
DATE 09/8/4
THEATER SONY
監督 ブライアン・テイラー/マーク・ネヴェルダイン
ナンバー 185
出演 ジェイソン・ステイサム/エイミー・スマート/デヴィッド・キャラダイン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


舌と乳首を自動車のバッテリーにブースターケーブルをつなげ、スタンガンをスパークさせ、果ては変圧器を直に触って体を帯電させる。さらに、電源がそばになければ摩擦による放電を利用しようと、衆人環視のもとでセックスに励む。胸に埋め込まれた人工心臓に充電しながら、盗まれた自分の心臓を取り戻そうと悪党を追いかける主人公の破壊力はこの作品でも健在。追撃の過程で見せる下品な行為の数々を真面目な顔でこなしていくジェイソン・ステイサムのバカバカしさは、ある種のカタルシスさえ覚える。ただ、物語の構成は緻密さに欠け、荒涼感漂う映像は粗雑な印象を残す。


ヘリコプターから墜落したチェリオスは中国系マフィアに回収され、心臓を摘出された代わりに人工心臓を埋め込まれる。意識が戻ったチェリオスは、心臓を持っているパンという男を追う。


人工心臓の電圧が低下すると体中の力が抜け、チャージすると急に元気になる。身の回りにあるあらゆるものを電源にする発想が楽しい。特に、弱っているときに複数の警官に袋叩きにされ、それでも抵抗をやめないチェリオスに一人の警官がスタンガンを撃つと、とたんにチェリオスが元気を取り戻し、一瞬で警官の一団をぶちのめすシーンは洗練されていた。しかし、充電しなければ心臓が止まる設定にエスプリを効かせているのはここだけで、後はB級映画にありがちな血と暴力と女の裸を短いカットでつなぐおもちゃ箱をぶちまけたような展開に陥っている。


チェリオスとパンの一騎打ちは変電所という圧倒的に有利な場所が舞台で、どんなアイデアを凝らした格闘アクションを見せてくれるのかと思いきや、「大日本人」のような着ぐるみがノロノロと取っ組み合いをする。笑いを取ろうという意図なのだろうが、完全にスベっていてため息しか出なかった。スリムでもパワーとスピードを兼ね備える稀有な身体能力を持ち、「ハゲかっこいい」男を演じてきたJ.ステイサムも、もう少し脚本を選ばなければS.セガールのようになってしまいそうで心配になった。


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