こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

96時間

otello2009-08-24

96時間 TAKEN

ポイント ★★★
DATE 09/8/22
THEATER THYK
監督 ピエール・モレル
ナンバー 197
出演 リーアム・ニーソン/ファムケ・ヤンセン/マギー・グレイス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


問答無用で悪党をぶちのめし、銃口を向けてくる者にはためらわずにトリガーを引く。誘拐した少女を麻薬漬けにして売春宿に売り飛ばし、上物の処女は競りにかけるなどという言語道断の悪行を「ビジネス」などとうそぶく輩に死の鉄槌を下す。主人公の、正義感=1%・娘への愛=99%のたった1人の戦いは、あらゆる者がひれ伏すその圧倒的な強さ。善悪の基準を単純かつ明確にし、彼の殺人や破壊といった行動のすべてを正当化する価値観は却って潔い。枯れた味わいのリーアム・ニーソンが突如殺人マシーンに変身する落差も楽しめた。


特殊工作員のブライアンは年頃の愛娘・キムが愛おしくてならない。ある日、友人とパリ旅行に出かけたキムが犯罪組織に誘拐されるが、ブライアンは犯人側のリーダーに「必ず追い詰めて殺す」と予告し、単身パリに飛ぶ。わずかな手掛かりを元にアルバニア人グループと人身売買組織の存在を突き止める。


資産家と再婚した妻と暮らすキムに会える機会は少なく、せっかくの彼女へのバースデープレゼントも置き去りにされるブライアン。キムの成長の記録ともいえるアルバムを眺めて思いに浸る姿が哀しい。さらにキムの喜ぶ顔見たさにパリ行きを許可したり、空港まで送る溺愛ぶり。このあたり心配されればされるほど鬱陶しがられる親の悲哀が非常に細やかな感情で表現される。また、格闘術や射撃の腕前だけでなく、情報の収集と分析、動作の速さと的確さ、欺瞞とハッタリ、効果的な拷問まで、工作員のスキルが次々と紹介されるスピーディな展開は予断を許さない。それは、ブライアンが終始英語で押し通したり、パリのアルバニア人犯罪組織がなぜか全員英語を話すなどといったご都合主義も吹っ飛ぶパワフルな映像の洪水だ。


当然ながらブライアンだけで犯罪組織を全滅させ、キムは無事救出されるのだが、ブライアンは最後まで甘いオヤジの顔を崩さない。歌手になりたいなどと戯言を口にしていたキムをスターに会わせるのだ。ここはやはり、あくまで父から娘への愛情は一方通行で、命がけでブライアンに助けてもらったことなどけろりと忘れているバカ娘としてのキムを描いたほうが、世の父親たちの共感を得られたのではないだろうか。。。


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