こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

私の中のあなた

otello2009-09-01

私の中のあなた My Sisters keeper

ポイント ★★*
監督 ニック・カサヴェテス
ナンバー 203
出演 キャメロン・ディアス/アビゲイル・ブレスリン/アレック・ポールドウィン/ジェイソン・パトリック
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


両親の愛の結晶としてではなく、姉のドナーになるべく計画的に生を受けた少女。彼女はその事実を受け止め、精いっぱい姉のために生き、姉の命を救おうとする。しかし、腎臓の供出を求められ、結果として人なみの青春を送れないと知った時、母親を訴えるという暴挙に出る。はたして彼女の臓器は誰のものか、親が本人の意思に反して臓器を取り出せるのか。映画は、この母娘の葛藤を通じて、家族の在り方を問う。子供への愛に序列をつける母親、彼女を冷ややかに見つめる父親、母の愛を持てあます姉、姉の気持ちも妹の気持ちも理解している息子。それぞれの立場から一家の現状を描きつつ、正解などないけれどよりよい答えを見つけようとして奮闘する姿を追う。


白血病の娘・ケイトを助けるためにサラとブライアン夫婦はアナを生む。アナは幼いころから様々な体の部位をケイトに提供してきたが、腎臓移植の話が出たとき、初めて抵抗、弁護士を通じてサラを告訴する。


日々弱りゆくケイトの肉体、毛が抜け、あざが浮き出し、鼻血が止まらない。それでも普通の女の子同様、恋もおしゃれもしたい年頃だ。だがアナは姉を愛しつつも見殺しにする道を選ぶ。サラはそんなアナが許せない。アナの胸中を考えずにケイトを死なせないことだけに暴走するサラにブライアンは複雑な心境。ケイトを愛する思いはみな同じなのに、いつしか心がバラバラになっていく様子が切ない。


ただ、家族の意見の食い違いを表現するのに、やたらと現在と過去を混在させる編集法は、見ていて混乱するだけ。せっかくサラが頭を丸めたのだから、彼女の髪の伸び具合で時間の経過を示すくらいの親切さがほしい。物語の起点となる「今」の始まりは、アナが弁護士のもとを訪れた時点なのだろうが、その後はケイトと両親の思い出や弟のエピソードなど前後の脈絡もなく視点と時制が入り乱れる。このあたり下手なテクニックに走らず、もっとすっきりと見せたほうが話の展開に統一感が出たはずだ。


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