こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ウォッチャーズ

otello2009-09-12

ウォッチャーズ HOMECOMING


ポイント ★★
監督 モーガン・J・フリーマン
ナンバー 216
出演 ミーシャ・バートン/マット・ロング/ジェシカ・ストループ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


故郷を離れた男がその距離ゆえ自然消滅したと思っていたのに、女はただ彼の心を信じひたすら待ち続けている。学園のスターだった男が大学で新たな生活を始めたが、片田舎に残った女にとっては彼は人生ただ一つの希望。そんな、思い込みの激しい女にはっきりと「別れ」を告げなかったゆえに起きる悲劇が狂気となって加速する。魅力的な外見とは裏腹に、思い通りに生きられなかったことが原因で精神のバランスを崩した女の、歪んだ愛と執念がリアルな痛みとなって再現される。


大学生のマイクはガールフレンドのエリザベスと共に帰省するが、マイクの元恋人・シェルビーはマイクが自分のもとに戻ってきたと勘違いする。シェルビーはエリザベスに強い敵意を抱き、夜道を1人歩くエリザベスを偶然車ではねたことから自宅に監禁する。


確かにシェルビーのような女にはっきりと別れを告げるとストーカーになって追いかけられるのは目に見えていて、マイクはそれが怖くて言い出せなかったのだろう。マイクとしては大学進学を機に連絡を絶って、彼女に忘れられることに期待したはず。なのに再会するとつい誘いに乗ってしまう弱さを見せたり、誘惑される直前で我に返ったりと、どっちつかずの煮え切らない態度を取る。こういうタイプの女ときれいに別れるには、嫌われるように仕向けなければならないのに、人のよいマイクはそれができない。恋の始まりは得意でも、終わりは苦手なマイクの姿が情けなくも共感できる。誰かが傷つかなければ恋は終わらない、まだ若いマイクはそのことを知らないのだろう、シェルビーの策略に乗せられる姿が滑稽だ。


映画は、プリントの具合なのか、画面が非常に暗くて昼間のシーンでも細かい部分が見えない。きちんと光量を調節しクリアで明るい映像を撮るべきだろう。また、エリザベスがシェルビーに捕えられて以降の展開は「ミザリー」の二番煎じでまったく新鮮味がない。シェルビーが、昔の思い出の数々をマイクに思い出させじわじわと心理的に追い詰めるようなサスペンスや、マイクを愛するあまり正気を失っていった哀しみを盛り込んでほしかった。


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