こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

僕らのワンダフルデイズ

otello2009-09-18

僕らのワンダフルデイズ

ポイント ★★*
監督 星田良子
ナンバー 198
出演 竹中直人/宅麻伸/斉藤暁/稲垣潤一/段田安則
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


残された時間がわずかと気づいてしまった男が、果たせなかった夢を叶え家族に大切な思いを遺そうと若き日に情熱を傾けた音楽に昔の仲間を誘う。だが、今はみな立場が違いそれぞれに悩みを抱えている。息子との葛藤、事業の不振、痴呆症の母、重荷を背負った男たちが一念発起してバンドに取り組む姿がすがすがしい。53歳、あきらめて引退するには早すぎるが人生この先上がり目のないのも見えている、そんな男たちの輝く笑顔の裏にほの見える悲哀がリアルに描かれている。


入院中の病院で、「末期ガンで余命6カ月」という医師の話を立ち聞きした徹は落ち込んでしまう。ある日、息子の通う高校の文化祭でバンド演奏を見かけたのをきっかけに、もう一度高校時代のメンバーと活動の再開を決意、ナベ、栗田、山本といったかつての友人を訪ねる。


ガンだと知ったとたん、妻や子供たちのちょっとした仕種や言葉の裏を深読みし、過剰反応してしまう徹の姿に笑いをもよおす。しかし一旦目標ができるとハイテンションで盛り上がる、その大きな落差を演じる竹中直人がはまり役。本来深刻なシーンすらコメディにしてしまうボルテージは健在だ。映画を観る者は徹が勘違いしていることを理解しているが、徹は自分がガンだと思い込んでトンチンカンな動を繰り返すという、練りこまれた脚本の構図が非常に洗練されていた。


さまざまな紆余曲折を経て、バンドはコンテストの出場権を得る。がんばっている姿を家族に見せたい、その気持ちだけで彼らは練習に励み、同じ目標に向かう男同士の友情を深めていく。このあたりは予想通りの展開で、実はガンなのは山本だったというオチ以外は新鮮味はない。さらにコンテスト本番直前に栗田のボケた母を行方不明にしてしまう場面など、無理矢理危機感をあおるために付け加えられた蛇足に過ぎず、少しテンポが落ちてしまう。最後に徹が娘の結婚式で披露する歌が素晴らしかっただけに、無駄なエピソードは省いて疾走してほしかった。


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