こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

よなよなペンギン

otello2009-10-06

よなよなペンギン

ポイント ★★*
監督 りんたろう
ナンバー 233
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ソフトな曲線と温かみのある質感で描かれたキャラクターと、光と影がファンタジックなコントラストを醸し出す背景の家並み。月光に照らされた街をペンギン柄のコートを着た幼い少女が走りまわるプロローグは、おとぎの国のテーマパークに迷い込んだよう。「ペンギンだって空を飛べる」と信じている彼女の一途な心が非常にキュートで、どんな夢も叶うと思い込んでいた子供のころに戻った気分になる。


父を亡くしたココのもとに天使の翼が落ちてくる。その夜、ココは猫の人形によってペンギンストアに案内され、空飛ぶソファでゴブリン村に連れて行かれる。そこは悪の帝王ブッカブーの手先・ザミーに荒らされていた。ココはゴブリンのチャリーに頼まれ、ゴブリン村を救うために立ち上がる。


ザミーの正体は落ちこぼれ天使で、ブッカブーに精気を吸い取られながらも命令に従っている。「正しい」神の道から外れたザミーが悪事に走る場面は、落ちこぼれ天使の心情が切ないほどリアルに描写されている。本当はザミーもいいやつで、悪さをするのは寂しさの裏返し。ココはそんなザミーのひねくれた内面をすぐに見破って友達になってしまう。その後ゴブリン村の救世主としてココはブッカブーと戦うが、行動を起こす勇気を持つこと、仲間を信頼すること、そして何より自分の願いを達成しようという強い気持ちこそが人を動かすことを、ココを通じて映画は訴える。


この作品の対象年齢は小学校低学年くらいまでの子供だろう。だからこそストーリーの細かい整合性にとらわれず、自由な発想で物語は飛躍する。大人の目から見るとそれはご都合主義なのだが、何の疑いも持たない子供はココやザミーに共感し、自分たちも空を飛び悪魔とも戦うが優しさも忘れない主人公になれると想像力をかきたてるのだ。身の回りに起きる不思議な出来事を、考えずに受け入れてすんなりその世界の主人公になる。子供だけが持っている未知なるものへの好奇心、それをなくしてしまった大人が見ても楽しめる作品だった。


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