こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ユキとニナ 

otello2009-10-31

ユキとニナ YUKI AND NINA


ポイント ★★★
監督 諏訪敦彦/イポリット・ジラルド
ナンバー 256
出演 ノエ・シャンピー/ツユ・ブリッドウェル/イポリット・ジラルド
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


両親の仲が悪いのは自分にも責任があるのではと小さな胸を痛める女の子は、食卓で父と母が些細な行き違いで言いあいを始め、やがてそれが怒鳴りあいに発展してもまるで耳をふさいでいるかのように黙々と食事を続ける。目の前で起きている夫婦関係の崩壊をなかったものにしておけば、再び家族が仲良く暮らせるようになるのでは、という彼女の思いが切なく哀しい。映画は、離婚という大人の事情に人生を左右される少女の姿を通じて、彼女たちの成長を描く。


9歳のユキは、両親が離婚しようとしていると知り、親友のニナに相談する。2人は「妖精からの手紙」を書いてユキの母親あてに送ったりするが、別れは決定的で、ユキは日本人の母と共に日本に行く日が近づいてくる。そんな時、母親とけんかしたニナと共にユキは家出、郊外にある父の別荘に忍び込むが隣人に見つかり、森に逃げ込む。


カメラはあくまでユキとニナの視線で世界を見る。よくわからないことも多いけれど、自分たちしか知らない秘密もいっぱいある。バツイチの母親をニナが問い詰めるシーンでは、男女間の愛はいつか覚める場合もあるのを理解できない彼女の態度が非常にストレートで、子を持つ離婚経験者には心に突き刺さったのではないだろうか。また、ユキが両親を仲直りさせるために幸せだったころの思い出を手紙に託す場面は、親を想う彼女の感情が涙を誘う。まだ、相手の気持ちを十分に慮れず、残酷さも思いやりも精いっぱい伝えようとする彼女たちの素直さが愛らしい。


ニナを残して森の奥に1人で迷いこんだユキはそこで覚えた不安と孤独を克服し、さらに離れ離れになる予定の父親がいちばん心配してくれたことで両親の離婚を了承する。ユキは日本の生活にもすぐに馴染み友人もできる。子供は大人が考えているよりずっと繊細ではあるけれど、逆に環境に対する順応性も高く過去よりも未来を見ようとする。生き生きとしたユキの表情に、子供は純粋さだけでなく、親が考える以上にたくましさを身につけていることを強く感じた。