こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ホワイトアウト

otello2009-11-04

ホワイトアウト WHITEOUT

ポイント ★★
監督 ドミニク・セナ
ナンバー 260
出演 ケイト・ベッキンセール/ガブリエル・マクト/トム・スケリット/コロンバス・ショート/アレックス・オローリン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


極寒の南極基地で起きた連続殺人事件、担当する女性連邦保安官が真相を推理し、謎を解明していく過程で身の危険にさらされていく。警察権を持つものがごく少数しかいない状況で、誰を信じていいのか分からない上、極限の低温と迫りくるタイムリミットのなかで捜査は遅々として進まない。まるで極地を襲う猛吹雪のように視界は遮られ真実が氷雪の奥に沈んでいく。南極基地に派遣される隊員は身元が精査され、犯罪を起こす心配がない者が選ばれているはず。だからこそ犯人の心の闇を語ってほしかったのだが、映画はぬるいアクションに終始する。


南極基地付近の氷床で死体が発見され、連邦保安官のキャリーは検死中に奇妙な縫合痕を見つける。さらに調査を進める途中、別のクルーが殺され、キャリーもまた防寒着に身を包んだ男にピッケルで襲われる。


キャリーは国連派遣の捜査員とパイロット、医者と共に事件を探るうちに50年前に行方不明になったソ連の輸送機を見つけ、積荷が犯人たちの目的だったと当りを付ける。そのあたり、犯人側もキャリーたちも独自に飛行機を飛ばすなど南極基地の管理体制の甘さが目に付く。もちろん隊員の行動をすべて監視するわけにはいかないだろうが、一つ間違えば死にいたる場所では身勝手な行動は厳禁。この基地の危機管理はどうなっているのか。


暴漢に襲われて手袋をせずに建物外に出て、ハッチを素手で握ってしまったキャリーの手がたちまちハンドルに張り付いてしまい、左手指が2本凍傷で壊死するシーン以外に南極の寒さが実感できないのが寂しい。普通の暮らしをしていては想像がつかない出来事が簡単に起こりうる、たとえば−50度で性質が変わる液体をとっさに武器にするなど、そんな南極の環境を活かした小道具も出てこない上、キャリーがかつて裏切り者の同僚を射殺したトラウマも彼女の「今」とのつながりが弱く、脚本がアイデア不足なのは否めない。結局、主犯は意外な人物だったというどんでん返しも、伏線が乏しく非常に唐突な感じだった。そこにもっと罪深い人間の欲望が描き込まれていれば退屈しなかったのだが。。。