こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ビッグ・バグズ・パニック

otello2009-11-07

ビッグ・バグズ・パニック INFESTATION

ポイント ★★★
監督 カイル・ランキン
ナンバー 262
出演 クリス・マークエット/ブルック・ネヴィン/レイ・ワイズ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


気がつくと、そこは大型犬ほどの大きさに巨大化した昆虫が支配する世界。人間はみな繭に覆われ仮死状態、そんななかわずかに目覚めた仲間と共に安全な場所を目指す生存者たち。襲撃してくる昆虫、ハイブリッド化した人間昆虫、そして状況が理解できず暴走する生存者。未知の状況に置かれた人々が絶望と戦い希望を見出していく途中で人間性をあらわにしていく。主人公をヒーロータイプではなく間抜けな若者にし、サバイバルの過程で彼がほとんど成長せず、最後までアホ面なところがよい。


遅刻の常習犯・クーパーは上司の部屋で突然の金属音に襲われる失神する。意識が戻ると町中が昆虫の糸に包まれていて、まだ生きているオフィスの仲間数人と、シェルターのあるクーパーの実家を目指す。


クワガタとゴキブリを合わせたような造形の巨大昆虫はいかにも「手づくり感」があって、CGの滑らかな動きとは違う60年代的な味わいが懐かしい。彼らの体液もホイップクリームのように安っぽく、いかにも低予算ムービーのテイストだ。虫に背骨を刺され下半身が虫化した人間の動きがぎこちないのも、むしろ笑いを誘う。さらに登場人物も小難しい理論をこねるよりも深く考えずに行動するタイプが多く、見ている方が心配になってくるほどだ。特に、昆虫が巨大化した原因を明らかにせず、環境問題や遺伝子操作といった屁理屈に結びつけていない潔さが却って心地よかった。


元軍人であるクーパーの父と合流した一行は、虫にさらわれたサラを救うために虫の巣に向かう。父はあくまでクーパーを半人前扱いで、クーパーもやっぱりしゃきっとしない。それでもクーパーはサラの歓心を買うために命がけで虫の女王との戦いに挑む。ここでもクーパーの活躍はどこか地に足がついておらず、彼の身に迫る危機よりも彼がどんなドジを踏むかで気をもませる。緻密なリアリティを求めるより、登場人物の変人ぶりを追求するというアイデアは、B級映画の予想を覆して退屈させなかった。