こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アフロサムライ:レザレクション 

otello2009-11-12

アフロサムライ:レザレクション AFRO SAMURAI RESURRECTION


ポイント ★★*
監督 木崎文智
ナンバー 265
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


デフォルメされた肉体と捻じ曲げられた空間は、剣客を生業とする者の感覚をリアルに再現する。距離感や質感は客観的には恐ろしく矛盾するが、武器を手に命のやり取りをする主人公の、研ぎ澄まされ、増幅された視覚や聴覚が知覚する脳内のリアリティなのだ。抜き身を一閃して敵をぶった切るかと思えば、盾に取った相手ごとその後ろにいる敵を串刺しにする。太く力強い直線と繊細で緻密な曲線が見事にマッチしたアニメーションは、殺戮と孤独を友として生きる剣客たちの独特の世界観を構築している。


最強の剣客の証である「一番」のハチマキと父の遺骨をシヲ一味に奪われたアフロは、「一番」への挑戦権を得るために「二番」のハチマキを持つ七五郎を倒す。アフロに復讐を誓うシヲたちはアフロの父を再生させ、アフロを待ち伏せしていた。


時代劇でありながら、人間とサイボーグの融合体だけでなく、遺骨から人体を再生するという最先端の科学まで登場する。また、寡黙なアフロに代わって語り部となるニンジャニンジャは、ラップに乗せてアフロの気持ちを代弁する。パワフルで歯切れのよい音楽がシュールな映像にマッチし、凄惨で血なまぐさいはずのシーンがビデオゲームを見ているような気にさせる。


ただ、格闘場面の描写があまりにもアフロの主観に寄りすぎているために、何が起きているのかよくわからない。襲い掛かる切っ先と、それをかわして太刀を浴びせるアフロ、そして体を真っ二つにされた敵という構図ばかりが目に付き、そこからは人を殺す時に感じる虚無感、いや、むしろ快感なのかもしれないが、アフロの感情が見えてこないのだ。まあ、剣の達人ならば無の境地を心得ていてどんな状況も冷静でいられるということなのだろうか。それでも、かつて共に剣の道を志した兄弟分を殺し、ゾンビ化しているとはいえ実の父を殺し、酒を酌み交わした男をも殺す、そんな過酷な環境をサバイバルきたアフロの胸の内を、直接彼の言動から知りたかった