こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

理想の彼氏

otello2009-12-03

理想の彼氏 The Rebound

ポイント ★*
監督 バート・フレインドリッチ
ナンバー 286
出演 キャサリン・ゼタ=ジョーンズジャスティン・バーサ、リン・ウィットフィールド
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


日常で起こりうる出来事をデフォルメし、観客に「似たような経験がある」という共感を持たせてこそコメディは笑えるのだ。しかし、子供の誕生日パーティを撮影したビデオに夫の浮気現場が収録されていたり、10歳に満たない子供がおばさんの井戸端会議みたいな話題を口にしたり、ボクサーが試合で客席までブッ飛ばされたり。極めつけはヒロインがデートする中年男が街角でキスする直前公衆便所に入り、大の用を足しながら話しかける。脚本家が頭の中で考えた稚拙なアイデアを映像化しても笑いとはほど遠く、嫌悪感ばかりが募っていく。


夫の浮気を知ったサンディは娘と息子を連れてNYに引っ越す。カフェで知り合ったフリーター青年・アラムに子守りを頼むと、彼は子供たちと意気投合、やがてサンディも彼の未熟だがまっすぐな人柄に惹かれていく。


アラムは名門大学卒だが、就活もいまいち力が入らず、「自分探し」するほど悩んでもいない。何事にも積極的にならず流されるまま居心地のいい場所を見つける典型的な草食系男子という、非常に身近なキャラクターだ。年上のサンディにリードしてもらいつつ己の本心に気付いていく気持ちの変化は身につまされるものがある。


一方でバツイチ40歳のサンディは、得意の情報分析能力を生かしてスポーツチャンネルで働き始めるが、仕事だけでなくジム通いやデートなどプライベートの充実に忙しい。その間、当然子供の面倒はアラム任せなのに、妙に大人びた子どもたちは物わかりよく母親の行動を黙認している。もちろん彼女が自分の人生を楽しんでいけないいわれはないが、子連れで別れた以上、もっと優先させるべきことがあるはず。この辺りも現実離れしていて、同じような立場の女性が見てもアホらしくなったのではないだろうか。ただ、アラムの友人の三文芝居に感想を求められた時、「ポストモダン的解釈」と言ってお茶を濁すシーンだけは妙に説得力があった。まあ、そういう意味ではこの映画自体も「ポストモダン的」だったが。。。