こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

(500)日のサマー

otello2010-01-11

(500)日のサマー (500) DAYS OF SUMMER


ポイント ★★*
監督 マーク・ウェブ
ナンバー 7
出演 ジョセフ・ゴードン=レヴィット/ズーイー・デシャネル
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


男にとって女心は永遠の謎。理性よりも感情で動き、ちょっとした出来事で不機嫌にも上機嫌にもなる、そのメカニズムを知らずにいると一方的に振り回される。恋の始まりのころならば小悪魔的な魅力に思える言動が時間がたつにつれて腹立たしくなり、好きな気持ちをはぐらかされ付き合っているつもりになっているのに不意に突き放される主人公は、いつしか愛という名の苦悩に苛まれていく。運命の出会いを信じる男と出会いは偶然と割り切る女のかみ合わない交際を通じて、傷つくことを恐れる現代の若者の胸の内をリアルに再現する。


グリーティングカードのコピーを書いているトムは、新入社員のサマーに一目ぼれし、会社のカラオケ大会をきっかけに接近する。やがて交際が始まりふたりはデートを重ねるが、サマーは突然もう会うのをやめようと切り出す。


初めてサマーとセックスをした翌朝のトムがいきなり歌い踊り出してミュージカル仕立てになったり、サマーのパーティに呼ばれたトムの「理想」と「現実」を並列したりと、トムの心理状態を具体的な映像で表現するシーンには共感できる。また、同じオフィスに勤めるキュートな女性に対して勝手な妄想を巡らせる片思いの至福が、IKEAで幸せなママゴトに変わる場面など非常に洗練されたセンスを感じる。一方でなぜ時制をランダムに並べるようなややこしい編集をしたのか。各々のエピソードが後の伏線になっていたり因果関係で結ばれているわけでもなく、ただ混乱するだけだった。


ほんの20年ほど前までは、男にとって恋愛は、女をいかにホテルか自室に誘い込みセックスに持ち込むかだった。女も体を許した男を何とか引き留めようとし、とりあえず性の相性が良ければ付き合っていたものだ。しかし、セックスまでのプロセスが簡略化された21世紀、男女の仲を長続きさせる要素はいったい何なのだろう。自信を持てないトムと、とらえどころのないサマーをみているとそんな疑問ばかりが脳裏に浮かんできた。