こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

TEKKEN−鉄拳−

otello2010-03-25

TEKKEN−鉄拳−

ポイント ★★
監督 ドワイト・H・リトル
出演 ジョン・フー/ケリー・ヒロユキ・タガワ/ラティフ・クロウダー
ナンバー 72
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


マーシャルアーツ、カポエラコマンドサンボ、骨法、合気道、剣術、忍法、キックボクシングといったあらゆるジャンルの使い手たちが一堂に会して覇を競う大会にひとりの青年が挑戦する。しかし、そこには彼の知らない秘密が待ち構え、陰謀に巻き込まれていく。映画は通常の格闘技バトルでは飽き足らず、主人公の出生や親子の確執を盛り込み、ただ強さを証明する物語にとどまらず怒りと憎悪について掘り下げようとする。だが、ゲームソフトを実写化しただけの奥行きのない世界観はかえって作品の足を引っ張り、登場人物の華麗なテクニックの数々も驚きとはほど遠い。


鉄拳シティの外で密売をする仁は、母を殺された恨みから街の支配者・三島に復讐するために武術トーナメントに参加する。一般エントリー枠で予選を通過した仁は強大な敵を相手に善戦、決勝戦まで勝ち上がる。その裏で三島の息子・一八が謀反を起こし、トーナメントの支配権を奪取する。


スラム街の路地を駆け抜け、塀を飛び越え、屋根の上を走る。仁に扮するジョン・フーの身体能力は見ごたえはあるのだが、そのアクションはどこかで見たようなオリジナリティのない代物。さらに、格闘シーンは無用に撮影に技巧をこらすために、せっかくの鍛えあげた肉体から繰り出される技が死んでいる。ゲームが持つ雰囲気を映像に変換しようとしているのだろうが、生身の俳優が演じるならばもっと格闘にリアルさを追求してバーチャルにはないものを見せてほしかった。


一八が実の父を監禁し、トーナメントのルールを「一方が死ぬまで戦う」と変えてから、血なまぐささは倍増する。だが、スリルや昂奮は消え、アホとしか思えない一八の行動に唖然とするばかり。DNAを調べて仁が自分の息子であると突き止めたのに、仁の母親を殺したばかりでなく仁まで始末しようとする。およそ組織のトップに立つべきではない器量の小ささに、後半はしらけっ放しだった。この男に限らずキャラクターに魅力がないことが致命的だった。