こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

劇場版 銀魂 新訳紅桜篇

otello2010-05-04

劇場版 銀魂 新訳紅桜篇


ポイント ★*
監督 高松信司
出演
ナンバー 106
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


原作やTVアニメのファン以外の“いちげんさんお断り”と映画の冒頭で宣言されてしまうのだが、まさに何の予備知識もない者はお手上げ状態になる。妙に真剣なバトルシーンの間に突然はさみこまれるぬるいギャグ、楽屋裏話で盛り上がっている登場人物、そして悪ふざけとしか思えない次回予告など、無料で視聴できるTVならば「実験的」として見る者も喜ぶだろうが、わざわざ映画館に足を運んでお金を払って見に来る観客に見せる代物ではあるまい。はたして映像のクオリティも低く、これが日本製アニメかと思うほど。劇場版と銘打つのならば、せめて目を見張るような映像だけでも見せてほしかった。


江戸の町に妖刀・紅桜を使う辻斬りが出没、攘夷志士の桂が斬られて姿を消す。桂の友人・エリザベスが万事屋に捜索を依頼、神楽と新八が桂の消息を追う。一方、銀時は刀鍛冶兄妹の依頼で盗まれた紅桜の行方を追う。


紅桜は、刀を合わせた相手の技量を吸収するだけでなく持ち主に寄生して支配する人工知能を持った超ハイテク刀。辻斬り・似蔵の斬り落とされた右手からこの刀が生え、そのまま武器として銀時との一騎打ち使うのだが、ここでもう少し似蔵の「己の肉体を犠牲にしても銀時を倒したい」という、歪んだ執念が描かれていれば共感できたのだが・・・・・・。また、紅桜を鍛えた男の幼少時の思い出や、銀時・桂・高杉が吉田塾の同窓だったことも伏線として生きていない。


ポケモン」や「クレしん」「ドラえもん」などの長年愛され続けているアニメは、TVアニメ→劇場版映画の過程でオリジナルのエピソードを作りこみ、元ネタの知識がなくてもそれなりに驚きや感動を得られる。それが国民的アニメといわれる所以だ。しかし、この「銀魂」はそんな外向きなメッセージを送る気もそれに伴う付加価値も全くなく、熱狂的なファンの閉じられたサークルにのみ意識が向いている。劇場版を見る前に原作だけでも読んでおくべきだったと反省する一方、この作品のコアなファンと思われる10〜20代の観客がほとんどの客席をうめた映画館内からは笑い声が一切聞かれなかったところを見ると、やっぱり「銀魂」ファンが見ても面白くなかったのだろう。。。