こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

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otello2010-07-22

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ポイント ★★*
監督 小沼雄一
出演 渡辺奈緒子/光石研/佐津川愛美/みひろ
ナンバー 169
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


恋人との1対1のセックスではなく、数人のスタッフらが見守る中での“仕事としてのセックス”。こんなことはやりたくないと思っていても「感じているフリ」をしなければならない。プロとしての責任と女の子としての心の壁がヒロインの中で激しくせめぎ合う。映画は、芸能人になりたいという漠然とした思いで東京に出てきた少女が、裸で夢を叶えるまでの不安と葛藤をリアルにさらけ出していく姿をとらえる。失ったことで得たもの、得たことで失ったもの、それらが彼女の胸で熟成し、成長していく過程が瑞々しい感性で描かれている。


高校卒業後、東京に就職を決めたひろみは、渋谷でスカウトマンの榎本に声をかけられる。みひろという芸名をもらってヌードモデルになり、ストロボを浴びる快感を覚えていくが、やがて仕事が激減していく。


後はお決まりのVシネ→AVのコース。顔と名前を売るためにはAVも厭わないタレント予備軍が数多いる中で、みひろは“その他大勢”に埋もれていく。その一方で、裸の仕事に激しい嫌悪感を抱いている恋人や親友との軋轢。それでも有名になるという強い意志がみひろの背中を押す。熱心に演技の勉強をしているわけでもなく、人脈を作って売り込みをしているわけでもない、ハングリーにははるかに遠い環境で、セックスを売りにするだけでお手軽に注目を浴びセレブ気分になれる、そんなユル〜いサクセスストーリーに現代の空気が濃厚に凝縮されていた。


◆以下 結末に触れています◆


AV女優の世間体の悪さを親友のさやかにすべて代弁させ、みひろの家族が出てこないのはなぜだろう。AVに理解を示す親などほとんどいないのだから、彼らとの衝突、絶縁、そして孤独などをに味わせてこそ、みひろの芸能界で生きていく覚悟が示せたはずだ。結局、みひろにとってAVはあくまで通過点に過ぎず、本来の自分、つまりひろみはまっすぐに夢を追うのを諦めていないと言いたかったのだろう。この自伝的物語は彼女にとって「AV女優」を卒業して「女優」になるための禊ぎ、ならば彼女自身に対してもう少し踏み込んだ考察が欲しかった。