こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

特攻野郎Aチーム

otello2010-08-16

特攻野郎Aチーム THE MOVIE THE A-TEAM

ポイント ★★*
監督 ジョー・カーナハン
出演 リーアム・ニーソン/ブラッドリー・クーパー/クイントン“ランペイジ”ジャクソン/シャールト・コプリー/ジェシカ・ビール/パトリック・ウィルソン
ナンバー 194
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ディテールよりも派手な見せ場、理屈よりもアクション。主人公4人組がスリルを楽しむかのように暴れまわり、悪党どもをブチのめしていく過程が荒唐無稽であればある程、見る者の体内にでアドレナリンが放出されていく。医療用ヘリで戦闘ヘリと戦ったり、戦車に乗ったままパラシュートで降下したり、ビルを垂直に駆け下りたりと、映画は観客を驚かせるためのアイデアを次々に披露し、思考停止状態に追い込んでいく。そしてそこで描かれるのは男たちの固い絆と高いプライド。カネではなく名誉のために自ら危険に飛び込んでいく彼らの雄姿は、強さと賢さと優しさとユーモアを備えたクールな男の理想像だ。


米軍占領下のイラクフセイン派の残党が偽ドル札の原版を国外に持ち出すという情報を得たハンニバル率いるAチームが輸送中のトレーラーを襲撃する。何とか原版を米軍基地に持ち帰るが、司令官が乗った自動車ともども爆破され、原版は何者かに持ち去られる。


ハンニバルが原版強奪計画をチームのメンバーに説明中に、同時に実行しているシーンを挿入する編集が非常に手際がよくスピーディ。イラク兵の警備など取るに足らない存在といった割り切りが、この作戦の裏にある陰謀の存在を大きく不気味に見せることに成功している。さらにパイクという男がが我が物顔で基地内を歩く姿は、正規軍が手を出せないような“汚れ仕事”を専門に請け負う傭兵部隊が幅を利かせていて、軍法の管轄外である彼らに米陸将が任務を命じるなど、軍と傭兵の需給関係がイラク問題をより複雑にしている現実を物語っている。


◆以下 結末に触れています◆


やがて盗まれた原版を追ってハンニバルたちAチームは奇想天外な方法で軍刑務所から脱走、奪還に向かう。その際も、なぜか服役中のハンニバルの方がCIAエージェントより情報が豊富だったりと、あらゆる点で“一歩先”を行っている。そこに軍警察の女性中尉なども絡み、物語は二転三転。ツッコミどころ満載の作品ながら、最後まで飽きさせないサービス精神がそれを補ってあまりあった。