こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

リトル・ランボーズ

otello2010-09-01

リトル・ランボーズ SON OF RAMBOW


ポイント ★★★
監督 ガース・ジェニングス
出演 ビル・ミルナー/ウィル・ポーター/エド・ウェストウィック/ジュール・シトリュック
ナンバー 199
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


「たった1人で200人の武装警官を倒す男」。テレビをはじめあらゆる娯楽を禁止されて育った子供にとって、生まれて初めて見た映画の残像はあまりにも強烈。まるで戦いの神が舞い降りてきたかのような無敵感に胸が高揚し、いつしか夢の中で自分が映画の主人公に入れ替わっている。そんな、多感な年齢の彼が空想するイメージが楽しい。物語は「ランボー」の虜になった少年が、悪ガキとともに熱中した映画の撮影を通じて、友情と信頼を育んでいく過程を描く。二度と帰らぬ懐かしい日々の輝きとともに、人々の温かさが伝わってくる。


厳格な宗派の信者の家庭で育ったウィルは、リーという少年と知り合いになる。リーの映画作りを手伝ううちに、ウィルは「ランボーの息子」役になり、2人だけのアクション映画撮影が始まる。そこに、フランスからの留学生・ディディエが加わり、ウィルとリーの仲がこじれ始める。


ウィルは戒律を押しつける大人たちとまず戦わなければならない。リーとつるむのを快く思わない母や信者に嘘をつき、撮影時間を捻出する。与えられた聖書に様々なイラストを描き込んで魂を解放しようとするウィルにとって、映画で「強い男」を演じるのは最高の自己表現。それは一方ですべてを管理しようとする母から逃避でもある。しかし、「ランボーの息子」に扮するうちに闘うべきは弱い己だと気付き、自らの意思を主張し始める。そのあたりの少し頼りないながら必死に頑張る姿がほほえましい。また、誇張されたディディエのキャラクターは、フランスの洗練された文化に対するイギリスの田舎の小学生のコンプレックスとして見事に機能していた。


◆以下結末に触れています◆


結局撮影中の事故で映画は未完のまま、リーは負傷して入院する。それでも、ウィルの母は信仰がウィルを縛っていたと気づき、リーに辛く当っていたリーの兄もリーの気持ちを知る。壊れたカメラに収められていた、稚拙だがアイデアと情熱が込められたショットの数々が、映画館で形になってリーを迎える場面は、人はたくさんの人に支えられて生きているということを思い出させてくれる心温まるシーンだった。