こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

メッセージ そして、愛が残る

otello2010-09-16

メッセージ そして、愛が残る AFTERWARDS

ポイント ★★*
監督 ジル・ブルドス
出演 ロマン・デュリス/ジョン・マルコヴィッチ/エヴァンジェリン・リリー/リース・トンプソン
ナンバー 211
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


死は悲しい運命なのか、粛々と受け入れる永遠の眠りなのか。様々な人の死を予言され、その瞬間に立ち会った主人公が自らもまた最期の時が近いと知らされ、何をすべきかを自問していく。それは残された者へ感謝の念を伝える旅。映画は仕事中毒の弁護士が、ある男の出現で生き方を変えて行く中で、人間らしい感情を取り戻していく過程を描く。息を引き取るときに誰かがそばにいる、それだけで素晴らしい人生だったと思える。まして愛する人に看取られるなら、死は恐れるものではないとこの作品は訴える。


NYで働くネイサンのもとにケイと名乗る医師が現れ、死について語る。ネイサンは最初は相手にしなかったが、ケイが大学時代の恋人の死を予告し、ネイサンが彼女が殺される現場に居合わせてにわかに信じ始める。ネイサンには別居中の妻・クレアとの溝を埋める必要があった。


普段意識していない「死」が、ケイの出現によってその影を濃くし、執拗にネイサンに付きまとう。理論を重視し、人の命をカネに換算するのには長けていてもその重さを実感することのなかった彼が、徐々にケイの言葉に耳を傾けていく。少年のころ交通事故で臨死体験したネイサンは、その時に見たビジョンを無理に封印してきた。だからこそ、ケイを疑いつつも否定しきれない。いや、どこかで彼こそが己の理解者ではと期待している。一方で赤ちゃんを死なせクレアを責めたことでナーバスになっている。そんな自分でも整理しきれぬ気持ちの微妙なゆらぎをロマン・デュリスは目の動きだけで演じて見せる。


◆以下 結末に触れています◆


ケイはターミナルケアの医師として多数の患者を看取ってきたはず。穏やかで満ち足りた死ばかりでなく、本人が認識する間もなく訪れた突然の死もある。その経験から心の痛みを少しでも和らげ、死は決して耐えがたい別れではないことを広めたいのだろう。ただ、ネイサンもケイも表情はずっと深刻なまま。「死」を伝えるのに厳粛な雰囲気は必要だが、それでももう少し笑顔を見せてくれなければ、やはり「死」は不幸なものだと思わざるを得ない。。。